中小企業がSEOやAI検索のSEOを有利に進めるためには、広報とデジタルPRを組み合わせて効果的にメディア露出とクチコミを増やすことが最善の策です。この記事では、中小企業に適した広報とデジタルPRの概要を説明するとともに、事例を含む取り組みのヒントをお伝えします。
中小企業にとって広報とは
現在のSEOおよびAI検索のSEOでは、自社サイト上でコンテンツを発信していくことと同様かそれ以上に、独立した第三者から言及してもらうことが重要です。自分で「よく書く」ことよりも第三者に「よく書かれる」ことが重要なのです。その第三者に働きかけ、関係性を深め、言及を引き出していくのが、現在の広報およびデジタルPRの役割です。
本来の意味での広報(PR:パブリック・リレーションズ)とは、顧客、取引先、地域社会、そしてメディアといった多様な関係者との良好な関係性を構築することです。ところがこれまでの伝統的な広報は、新聞や雑誌、テレビやラジオといったマスメディアに取り上げられることを重視してきました。
デジタルPR(オンライン広報)の台頭
現在では、情報を発信するのはマスメディアだけではありません。一般の人々がごく普通に、SNSやGoogleマップなどにクチコミを投稿し、ブログやYouTubeで商品をレビューしています。そして、それらのクチコミやレビューが検索エンジンやAI検索、AIチャットボットの重要な情報源となります。
オンラインメディアや一般の人々による発信が検索やAIの情報源として重用される現在、オンラインメディアや一般の人々を対象とするデジタルPRの重要性は急速に高まっています。デジタルPRとは、オンラインでの人々の言及を引き出すことによって自社の知名度や評判を構築することに重点をおいた広報手法です。
広報とデジタルPRが中小企業にもたらすメリット
AI検索やAIチャットボットが生成する回答の中で自社が正確かつ魅力的に紹介されるためには「独立した第三者からのポジティブな言及」を増やすことが極めて重要です。そして、この第三者による自然な語りを引き出すことにおいて、広報活動が中小企業にもたらすメリットは、主に以下の点に集約されます。
- 検索エンジンおよびAIが利用する情報源の構築 ── 現代の検索エンジンのアルゴリズムは、ウェブ上での言及量が多く、かつ評判のよい信頼できる情報を検索結果の上位に優先的に表示する仕組みです。また生成AIも、回答を生成する際には独立した第三者によるウェブ上の情報を重要な学習データや参照元として利用します。広報活動を通じてウェブ上に良質な情報を蓄積することは、AI時代における究極のSEOです。
- 知名度の向上 ── 権威あるメディアでの紹介や、一般消費者によるSNSでの自然なクチコミによってブランドが言及される機会が増加すれば、情報の拡散力は格段に高まります。結果として、これまで自社単独ではリーチできなかった潜在層の目にも触れる機会が生まれ、ブランドの知名度は加速的に向上します。
- 評判の構築 ── 信頼の置けるメディアに掲載されたり、そ分野に精通した専門家から肯定的な言及を受けたり、または実際の利用者からのクチコミで推奨されたりすることは「第三者による保証」として機能します。この「社会的証明(Social Proof)1」と呼ばれる心理的効果は非常に強力で、無名のブランドであっても市場における信頼を大きく高めます。
- 信頼関係の醸成 ── メディアの客観的な報道や、実際の利用者の生の声であるクチコミによるポジティブな露出は、第三者のフィルターを通した情報としてブランドに対する安心感を生み出し、ひいては長期的な顧客ロイヤルティに直結する深い信頼関係の醸成へと繋がります。
そもそもメディア露出とクチコミは、検索エンジンやAIチャットボットがあってもなくても、商売をするうえで何よりも重要なものです。僕たち人間は、検索エンジンやAIがあってもなくても、メディアやクチコミを参考にして、知名度が高く評判のよいものを選ぶからです。
広報で得られるパブリシティやクチコミは、世間から注目を集めていることの証明であると同時に、さらに知名度を広げていくための強力な推進力です。第三者からの肯定的な言及は、検索エンジンやAIがあってもなくても、またはそれらがどう進化したとしても、やらない理由はありません。
中小企業の広報施策の概要
広報と聞くと、多額の予算や専任のスタッフが必要だと考えるかもしれません。しかしデジタルPRを組み合わせることで、中小企業の限られた予算と人員でも十分な成果を上げることができます。日頃の業務に、ほんの少しの工夫と手間を加えるだけだからです。中小企業ならではの広報は、基本的には次のような手法をとります。
- 報道価値(ニュースバリュー)のある話題を創出しプレスリリースを配信する ── 単なる告知ではなく、メディアが「記事にして世の中に伝えたい」と感じる新規性や社会性や時事性といったニュースバリューのある話題を作り、プレスリリースを配信します。
- 業界や地域を牽引するソートリーダーとしての見解や提言を発信する ── 自社ブログや外部メディアへの寄稿やSNS投稿などを通じて業界や地域への洞察や提言を発信することで、特定の分野における第一人者(ソートリーダー)としてのポジションを確立し、メディアからの取材依頼や執筆依頼をもらう機会を増やします。
- 顧客や業界関係者とSNSを通じてつながり、コミュニケーションをとる ── 人間味のない会社の公式アカウントではなく社長の個人アカウントを使い、人間味のある双方向のコミュニケーションを継続することで、つながりのある人々による自発的な情報の拡散をうながします。
- 既存の顧客にクチコミやレビューの投稿を依頼する ── 商品やサービスに満足している顧客に対して、Googleビジネスプロフィールや業界特有のレビューサイト、あるいは自身のSNSでの感想の投稿をお願いします。実際の利用者のリアルな声は、次に購入を検討している潜在顧客にとって最も説得力のある情報源となり、AIがブランドの評判を学習する際の極めて重要な情報源としても機能します。
これらのうち「1」で述べたような、マスメディアへの露出が得られるようなパブリシティの機会はそう多くありません。ニュースとして取り上げられるような話題を提供できるのは多くても年に数回程度でしょう。特に中小企業の場合は、一般社会での認知度が低いため、報道価値を認められるハードルが高いという現実もあります。
中小企業のやり方としては、上記「2」「3」「4」で述べたような、業界や地域でのクチコミを活用していくのが良策となるでしょう。いずれにしても、あれこれと手を出すのではなく、あなたやあなたの会社にとって得意なこと、結果を出しやすいことに集中することが重要です。不得手なことをしている余裕は中小企業にはありません。
広報とデジタルPRの具体例
従来の広報は主にマスメディアへの露出を主な目的にしてきましたが、デジタルPRではオンラインメディアや個人のSNS、個人のブログなども含めて幅広い場所での露出も目的とします。ここではよくある取り組みから個別の事例まで、いくつかの具体例を紹介します。あなたの会社の広報を考えるヒントにしてください。
- 既存の顧客にクチコミやレビューの投稿を依頼する
- セミナーに登壇または自社で開催する
- YouTube、ポッドキャスト、ニュースレターを配信する
- 業界や地域の有力なサイトに寄稿する
- 地域や業界のイベントに協賛する
- 地域の学校や行政からの見学や視察を受け入れる
- 業界や地域で注目される自社イベントを開催する
- 公的機関が募集している公募賞に応募する
既存の顧客にクチコミやレビューの投稿を依頼する
デジタルPRの日々の取り組みとして最も有効なのはクチコミ投稿のお願いです。営業担当者や接客スタッフなど、日常的に顧客と接する社員が、直接クチコミの投稿を依頼するという手法は、シンプルながら強力です。あなたの事業に合ったプラットフォームを選び、顧客に感想を投稿するようにお願いしましょう。
できることは口頭でのお願いだけではありません。通信販売であれば、商品に同梱するメッセージや購入後のフォローメールを通じて、レビューやSNSの投稿をお願いできます。実店舗を運営しているのであれば、スタッフによる声掛けはもちろん、店内に掲示物を出して写真撮影やSNSへの投稿をうながす工夫も有効です。
セミナーに登壇または自社で開催する
自治体や商工会、業界団体など、社外の団体が主催するセミナーや勉強会の講師を務めることで、告知ページなどから言及や被リンクを獲得できるとともに「その役割を任されるだけの専門性や権威性を備えた人物である」という評判が得られます。セミナーや勉強会の講師を務める機会があれば、積極的に引き受けましょう。
セミナーや勉強会によっては講師の自薦が可能なこともあるでしょうから、業界のセミナーや勉強会についてよく調べ、自薦できる場合には自薦しましょう。登壇機会を得れば得るほど、次の登壇機会を得ることは簡単になっていきます。自分のプレゼンスが高まれば高まるほど、言及や被リンクを獲得できる機会は容易に得られます。
いくらかの実績を積めば放っておいても先方から講演依頼が舞い込むようになりますが、始めはそうもいかないかもしれません。そうした場合には、セミナーを自社開催するのも手段のひとつです。ただし自社開催する場合、講師というよりは販売員に見られやすく、効果は限定的になることには注意が必要です。
YouTube、ポッドキャスト、ニュースレターを配信する
これらに共通していることは「決まった視聴者や読者に定期的にコンテンツを届けられる」ことです。定期的に面白く役立つコンテンツを届け続けることで、視聴者や読者とのつながりを作り、親近感や信頼を高める効果があります。動画、音声、文字のうち、あなたの会社や商品に合った媒体を使い、視聴者や読者との関係を作りましょう。
届ける内容は、視聴者や読者(既存顧客を想定するといいでしょう)にとって興味深く、得るもののある内容が理想です。書き手であるあなたにしか語れない独自の視点や深い洞察を中心にすることで、読者に驚きや新しい発見を提供するのです。それができれば、あなたのブランドと視聴者や読者との関係はより一層深まっていきます。
僕自身も2026年から「住太陽のSEOニュースレター」を週1回のペースで配信しています。宣伝色を排し、僕の経験や考えに基づく役立つヒントがメールで届きます。無料ですのでぜひ購読をお願いします。
あなたのブランドと視聴者や読者との間に関係性が築かれていけば、結果としてそのブランドの製品やサービス、または取り組みが自然な形で視聴者や読者の話題にのぼり、クチコミとなって他の人や検索エンジンの目にもとまります。それがメディア関係者の目にとまることもあるでしょう。
業界の有力なサイトに寄稿する
コンテンツ制作能力に自信があり、業界の有力なサイトが執筆者を募集しているような場合には、寄稿者として応募するのも一つの方策です。著者情報欄や、場合によっては記事本文から被リンクを獲得でき、それ以上に重要なこととして著者としての評判や信頼を高める効果が期待できます。
執筆者を募集しているサイトは、Google検索で「ガジェット ライター募集」や「建築 ライター募集」や「農業 ライター募集」などのように「分野+ライター募集」と検索することで見つけることができます。うまく自分の業界や専門分野のサイトが見つかれば応募してみましょう。
僕自身も2023年からWeb担当者Forumで連載を始めたほか、2026年からは日経クロストレンドでも執筆を始めました。可能ならこうした取り組みにも挑戦しましょう。
なお海外では、メディア系サイト以外にも個人所有のブログがゲスト投稿を受け入れていることがあり、そうしたところにゲスト投稿することを「ゲストブロギング」といい、被リンク構築の方法の一角を占めている2といいます。ただしこの手法は日本では一般的ではないので、無視してよいでしょう。
地域や業界のイベントに協賛する
地域のお祭りや業界のイベントに協賛し、スポンサーとして露出することも知名度の向上につながります。ただし「単にお金を出して社名を出してもらって終わり」というのではなく、積極的にイベントの運営に関わり、そのイベントの関係者である地域や業界の人々との人間関係を築いていくことが重要です。
地域の学校や行政からの見学や視察を受け入れる
工場や倉庫、圃場や林地など、自社の作業環境に見学や視察を受け入れられる場合には、積極的に受け入れることで、見学記録や視察記録などの形で言及や被リンクを増やすことができます。近隣の小中学校の会社見学を受け入れたり、行政や同業者の見学や視察を受け入れが可能なら検討しましょう。
奈良県吉野郡黒滝村で銘木商を営む徳田銘木3では、施主や施工業者、行政や同業者などで年間600件ほどの見学や視察を受け入れています。これらの見学者によるSNS投稿で知名度が向上し、ブログ投稿や視察記録などによって言及や被リンクが増加するという循環を作り上げています。
業界や地域で注目される自社イベントを開催する
工場などの敷地を使って即売会などのイベントを開催することで、協賛社の告知や参加者のブログ投稿などから言及や被リンクを増やすことができます。福岡県筑後市で綿織物の製織と縫製を行っている宮田織物4では、近隣の小中学校の工場見学を受け入れているほか、定期的に工場即売会を開催し、テレビや新聞などのメディアに露出しています。
公的機関が募集している公募賞に応募する
自社の製品や取り組みを応募できる公募賞を探して応募し受賞することで、賞の結果ページだけでなく、マスメディアに取り上げられる機会が得られます。公募賞はよく探せば数多くあるもので、行政や公共団体から企業まで、さまざまな主催者がさまざまな賞を公募しています。
高知県須崎市で竹製品の製造と販売を行っている山岸竹材店5では、SDGsやサスティナブル社会、環境保全、自然素材、日本文化、伝統産業、地域振興などをテーマにした公募賞を見つけては応募を続けており、賞を受賞するたびにプレスリリースを配信し、授賞式があれば必ず代表の山岸氏が自分で出席して、集まった報道陣への取材対応をしています。
まとめ
この記事の執筆時点でSEO会社の多くは、対外的には「記事コンテンツが重要」と言いながら、自分たちはYouTubeチャネルやポッドキャスト、イベント開催、ニュースレター配信などを集中的かつ継続的に実施しています。それが重要だからです。もちろん僕自身も、外部メディアへの寄稿やニュースレター配信を実施しています。
SEO会社が言っていることではなく、やっていることのほうに注目すればわかるとおり、デジタルPRを含む広報、そしてパブリシティとクチコミの獲得は、現在のSEOおよびAI検索のSEOで最重要の課題です。AI時代をむかえたいま、むしろ記事コンテンツの重要性は減衰しています。やることを見直していく時期です。
ほとんどの企業であれば、既存の顧客にクチコミやレビューの投稿を依頼することが最も重要な施策になるでしょう。なぜならほとんどの企業はコンテンツではなく評判で選ばれているからです。だからこそ検索やAIも評判を見ておすすめを選択するのです。まずは既存顧客にクチコミやレビューの投稿をお願いすることを日々の業務に組み込みましょう。
重要なお知らせです。現在、SEOの新しいヒントや考察はこのウェブサイトではなく主に「住太陽のSEOニュースレター」でメール配信しています。メールアドレスだけで登録でき、毎週水曜日の朝にお届けしています。お見逃しなく。
住 太陽