自社ECサイトのSEOでは、正確で詳細にわたる商品情報に加えて、上位表示のためには高い人気とE-E-A-Tが必要となります。通販系のトランザクショナルクエリの検索結果には、その分野における人気の高いショップから順にリストされるからです。専門性に特化し、特定の分野での人気サイトを目指しましょう。
目次
ECサイトの検索上位は人気順
商品を探すトランザクショナル・クエリの検索結果は、他の検索意図の検索結果とは大きく異なり、ほぼ人気順といってよい順位で並びます。実際に [ホワイトボード 通販] と検索1したり、[ブラウス 通販]と検索2してみれば明らかですが、通販系のトランザクショナルクエリの検索結果の上位に並ぶのは、その分野の人気ショップのURLです。
このため自社ECサイトのSEOでは、評判と人気を高めていくことが施策の中心となります。既存顧客を中心とした外部に働きかけて評判と人気を示すシグナルを強化するオフページSEOを実施しますが、最終的には、実際に評判がよく人気があることや、多くの人々に使われていることなど、信頼されるブランドであることが重要となってきます。
SEOで勝てる自社ECサイトの条件
場所や時間の制限なく買い物ができるECサイトでは、同じ商品や同じカテゴリーの商品を扱うすべての他店と競合します。後発のサイトが苦戦するのは当然として、長く運営しているサイトですら簡単に行き詰まるのが独自ドメインECの世界です。この市場で勝ち抜くためには、以下の条件のうち少なくとも1つ以上を満たしていることが必要です。
- 他にない独自の商品を扱っている — 自社製造やOEMなど自社独自の製品を販売する場合や、独占的な販売代理店契約があるような場合など、他店では扱えない商品を中心に販売している。
- 大手が参入しにくい商品を扱っている — 特別な水産品や農産品や一部マニア向けのコレクターアイテムのように、流通量が少なく不安定で価格も流動的であるなど、大手資本が参入しにくい商品を中心に販売している。
- 固定のファンがつく商品を扱っている — マニアックな愛好家が多いなど、商品そのものやあなたのECサイトのファンになってくれるお客様がいる商品を中心に販売している。
- すでに一定の固定客がついている — リピーターによる売上だけで最低限の売上を確保できていて、そこからのクチコミを通じて新規客も確保できる状況になっている。
- 購入に際して多くの知識や検討を必要とする — 用途が特殊な商品や高額な商品のように、買い手に多くの知識が必要で、購入前に慎重な検討を必要とする商品を中心に販売している。
もし上記の条件のひとつも満たさないなら、SEOの前に自社ECサイトの運営そのものが厳しいと言わざるを得ません。どこでも手に入る商品や、ファンや固定客がつかない商品、買い手に特別な知識を要求しない商品なら、Amazonや楽天市場を相手に価格で勝負することになります。およそ勝ち目はないのが現実でしょう。
逆に、上記の条件のうち複数を満たしているなら、SEOで自社ECサイトの運営を安定的に成長させられる可能性があります。商品ページを作り込み、コンテンツで情報発信し、評判や人気を高めるためのオフページSEOを実施していくことで、大手サイトの間隙を縫って検索エンジンからの流入を最大化させましょう。
専門性に特化しニッチで勝つ
一般論として、品揃えが幅広くなればなるほど、その店の個性は消えていきます。家電量販店がいい例ですが、家電品なら何でも揃う大規模店舗はどこも似通っており、買い手からすれば安いか近いところで買うだけです。ヤマダだから買う、ビックだから買う、ノジマだから、エディオンだから、ケーズだから、といった指名理由はまずありません。
SEOで検索上位を獲得するためには、あなたのECサイトの個性を打ち出し、「○○と言えばこのサイト」と想起されるブランドを確立することが必要です。想起されるブランドとは、あなたのターゲット層にあたる人々の中でよく知られており、評判がよく、話題にのぼり、指名検索されるECサイトです。
こうした状況を作るためには、品揃えを広げるのではなく絞り、専門性に特化する必要があります。品揃えの幅広さと価格の安さで勝負するのが資本力のある強者の戦略である一方で、専門性に特化してニッチなカテゴリーで特定の顧客層に存在感を示すのが弱者の戦略であり中小企業のSEO戦略です。中小の自社ECサイトは弱者のSEO戦略を選択しましょう。
テクニカルSEOの制限
中小の自社ECサイトの多くはページ生成機能を備えたASPカートシステムを利用して制作されています。ASPカートシステムはショップ運営のための便利な機能が一通り揃っていて、システムをメンテナンスする必要もなく、非常に使い勝手がよい一方で、システム上の制限からテクニカルSEOのベストプラクティス3のすべてには対応できません。
こうした事情から、中小ECサイトではテクニカルSEOは可能な範囲にとどめざるを得ません。施策はページの作り込みを中心にしたオンページSEOと、サイト外部での評判の構築や、被リンクの構築、そして知名度の向上のようなオフページSEOを中心に進めていくことになります。
ページの作り込みとオフページSEOに注力せざるを得ないというこの事情は、結果的には良い方向に働きます。検索結果が人気順になるECサイトのSEOでは、人気と評判を高めるための施策が効果を発揮しますし、そのためにできることはページの品質を高めるための作り込みとオフページSEOだからです。
商品ページの品質
ECサイトにおけるメインコンテンツは商品ページです。Google検索品質評価ガイドライン4の「3.2 メインコンテンツの品質」によれば、メインコンテンツの品質は、その「ページの目的をどれほど達成しやすいか」と「ページが提供するユーザー体験の満足度はどれほどか」ということで測られます(下の画像の下線部分を参照)。

ECサイトの目的はユーザーが商品を購入できるようにすることですから、ECサイトにおける商品ページの品質基準は「どれだけスムーズに安心して買物ができるか」であると言ってよいでしょう。商品の購入がしやすく、その体験がスムーズで不安のないものであれば、商品ページは高い品質を備えていると評価できます。
メインコンテンツの品質は、コンテンツ作成に費やされた労力、コンテンツのオリジナリティ、コンテンツ作成に使われた才能やスキルによって判断できるといいます(下の画像の下線部分を参照)。また特に、情報ページとYMYLトピックのページでは、内容の正確さと、専門家によって確立されているコンセンサスと一致していることが重要です。

ECサイトのコンテンツには、労力、オリジナリティ、才能またはスキル、正確性のすべてが必要です。より安心して買いやすいページを作成するためには、ある程度の期間にわたって商品を実際に使用した結果をもとにオリジナルの説明文や説明写真を作成する必要があるでしょうし、文章や写真で商品をより魅力的に表現し、しかもその内容は正確である必要があります。
利用者の満足のために費やされた労力
労力とは、満足のいくコンテンツを作るために人間が費やした積極的な貢献のことを言います。ここでわざわざ「人間が費やした」としているのは、AIなどを使用した自動化との対比であると考えられます。利用者の満足や利便性を向上することを目的に、実際の人間が労力を費やすことが評価されるのです。

上記の記述の中で特徴的なのは、ソーシャルメディアやフォーラムでの参加者の発言もまた「人間が費やした貢献」に相当することがある、としていることです。ページの品質を向上させる努力はサイト運営者だけのものではなく、参加者が費やした貢献や労力が追加されることもあるという考え方は極めて重要です。
参加者の貢献は、ECサイトにおいてはソーシャルメディアへの投稿やカスタマーレビューの形で現れます。以下の画像の下線部分では、大量の有用な製品情報を提供することだけでなく、600ものユーザーレビューが掲載されていることでも、労力とオリジナリティを提供しているとして評価しています。

もちろん、商品ページの作り込みは運営者が示すことができる最も基本的な労力の表現です。具体的で詳しい商品説明や、美しくわかりやすい写真や動画など、工夫を凝らし、労力を費やして商品ページを作り込むことは重要です。反面、製造元から提供された説明文や写真をそのまま使うだけでは、高く評価することは困難です。

コンテンツと商品のオリジナリティ
オリジナリティとは、他のサイトにはない独自のコンテンツが掲載されていることを言います。他のサイトにあるコンテンツのコピーではオリジナルと認められないことはもちろんですが、他のサイトのコンテンツの焼き直しもまた、オリジナルとは認められません。また、他のサイトにも似たコンテンツがある場合、オリジナルの情報源を評価します。

仕入販売をしているケースで、製造元が提供している商品説明や商品画像をそのまま使い回したり、またはわずかな変更だけで使えば、製造元や他店のコンテンツと同じか似たものににしかなりません。他の商品と比較したり、実際にその商品を使用したりして、プロの立場から詳細にレビューする5ことをGoogleは推奨しています。
またECサイトにおいては、他店で扱っていない商品を販売していることがオリジナリティとみなされます(以下の3点の画像の下線部分をそれぞれ参照)。商品がオリジナルであれば、その商品説明もオリジナルのものとなり、結果としてそのページ全体がオリジナリティの高いものとなり、これが高く評価されます。



そのサイトが持つオリジナリティをそのサイトの存在意義と読み替えれば、他のショップにはない商品を扱っているECサイトが評価されることは当然でしょう。どこでも買える商品を寄せ集めただけのショップに存在意義を認めることは困難です。中小ECサイトにおいては特に、取扱商品のオリジナリティは重要な要件のひとつです。
ページ上で提供する情報の正確性
コンテンツの正確性が特に重視されるのは、情報ページと、YMYLトピックを扱っているページです。情報ページはECサイトにもありますし、ECサイトはお金を扱うため、すべてのECサイトは中程度かそれ以上のYMYLトピックであると考えられます。このためECサイトに掲載する情報は正確を期しておく必要があります。

ただし、専門家の間でコンセンサスのとれているエビデンスを示す(上の画像の下線部分)ところまでやる必要があるのは、健康や医療に関わる商品を扱っており、具体的な病名や症状名に言及する場合だけでしょう。消費財など通常の商品を販売するだけであれば、間違いがないように複数名でよくチェックするだけで十分です。
E-E-A-Tの達成度
ECサイトにおけるE-E-A-Tでは、最初のE(Experience:生活者としての経験)はそれほど重要ではなく、従来のE-A-T(E: Expertise 専門性、A: Authoritative 権威性、T: Trust 信頼)が重視されます。専門性では取扱商品についての専門知識が問われ、権威性や信頼では肯定的な評判や知名度がシグナルになるところがECサイトの特長です。
専門性(商品と商品知識の専門性)
E-E-A-Tにおける専門性は、専門知識や専門技能に優れていることを意味します。ECサイトではそれに加えて、自社のオリジナル製品を販売していることが評価されます。販売者は自社のオリジナル製品について細部まで熟知していて、また、その製品情報を外部に発信していることが多いからです。
下の画像では、子供用の最高級家具と小物というニッチな分野で店舗独自のシリーズを展開している店舗が紹介されており、そのようなニッチに特化した製品群についての高い専門性が評価されています。このサイトで販売されている商品の多くはこの会社の独自のものとなっており、それがこのサイトの専門性を高めています。

下の画像で紹介されている店舗では、最高の品質と最高の人気を持つオリジナルの通学用リュックサックを扱っており、その製造元および販売者として高い専門性が評価されています。単に自社のオリジナル製品についての専門性が評価されているだけでなく、その製品が品質と人気で知られていることが最高評価の要因です。

これらからわかることは、ニッチな分野で独自の商品を展開することがECサイトにおけるSEOの勝ち筋だということです。また、商品についてのスペックや仕様といった最低限の情報に加えて、使用感や使用上のコツ、メンテナンス方法などの情報も豊富に掲載することで、商品ページの専門性を高めることができます。
権威性(評判と知名度の高さ)
ECサイトにおける権威性は通常のサイトの権威性と同様に、引用元としての信頼性と、肯定的な評判や知名度が評価されます。以下の画像の店舗はアウトドア用品メーカーの L.L.Bean6であり、自社開発の商品を卸している関係から、ウェブサイトは引用における出典として各所で利用されており、この事実がサイトの権威性を高めています。

また、ECサイトの権威性(と信頼性)を示す重要なシグナルは評判(レピュテーション)と知名度です。物品の販売においては、有名であり肯定的な評判があることは、多くの利用者に信頼されていることを示すからです。以下の3つの画像の下線部分が示すように、Googleが高く評価するECサイトには肯定的な評判が欠かせません。



そのサイトについて肯定的な評判があるかどうかは、そのサイトの外部でどのように評価されているかが検討の対象です。また、詳細で信頼性の高いカスタマーレビューが大量にある場合には、そのECサイト上に掲載されたカスタマーレビューも肯定的な評判の根拠として扱われます(下の画像の下線部分を参照)。

信頼(連絡窓口とサポート情報の充実)
E-E-A-Tにおける信頼は通常、専門性や権威性の結果としてもたらされます。ECサイトの場合はこれに加えて、連絡窓口やサポート情報も重要です。ECサイトのユーザーには、疑問を解消したり問題を解決するための方法が必要だからです。特にECサイトでは、決済、交換、返品などの連絡窓口が必要です(下の画像の下線部を参照)。

また、以下の画像の下線部分が示すように、サポート窓口の情報が不足しているECサイトは、商品の販売というサイトの目的に照らして、信頼できるものではありません。サイトにこうした信頼の欠如があった場合、他の要因によって取り返せるものではなく、常にそのサイトは低い評価を受けます。

以下の画像の下線部分にあるように、詳細なサポート情報やサポート窓口が提供されていれば、そのことが高い信頼につながります。ECサイトの信頼性を高めるためには、専門性や評判に加えて、詳細なサポート情報や、サポート窓口の充実が必要とされるのです。

自社ECサイトのSEO施策一覧
ここまでの内容をふまえ、自社ECサイトに特有のSEOの施策をまとめます。以下の各項のうち、1から5はすべてのECサイトで実施すべきことです。このうち1から3はできていて当然の最低限の要件ですが、それらは4および5ができていなければ意味を持ちません。また、6は最終的な目標であり、7は可能であれば実施したいことです。
- 独自の情報を充実させる – メーカーから提供された商品情報の他に、独自の詳細な商品情報を充実させる。ある程度の期間にわたって店主が実際に使ってみて、類似品や旧製品との比較情報などを掲載することが有効。
- サポート情報と連絡窓口を充実させる – 決済や配送、返品、返金に関する情報や、メンテナンスやトラブルシューティングの方法など、詳細なサポート情報を提供する。また、メールや電話や対面など各種の問い合わせ窓口を用意する。
- 情報の正確性を高める – サイト内のすべての情報について正確性を担保する。必要に応じて専門家に監修を依頼することも検討する。また特にYMYLトピックについては、専門家によるコンセンサスのとれた根拠に参照リンクを貼ることを徹底する。
- サイト外部でのレピュテーションを集める – リスティング広告を併用するなどして顧客数を増やすとともに、同梱物やメルマガなどを利用してクチコミや被リンクの増加を狙う。顧客によるSNS投稿やサイト内外でのレビューを増やすことで指名検索を増やすと同時に、アフィリエイト広告を活用して言及の量を増やす。
- サイト内の商品レビューを集める – サイト内の商品レビューも十分な数が集まればレピュテーション情報として評価が高まる。もちろん買い物客にとっての利便性も上がり、買いやすくなるため、ステップメールやポイント還元などをうまく活用して商品レビューを集める。
- ニッチな分野でトップのブランドを目指す – 自社の専門性を最大限に活かせる特定の分野に特化し、そこでトップの知名度と評判の獲得を目指す。第一想起(消費者が一番最初に思い出すブランド)になるための活動を優先する。
- オリジナル商品を製造する – 製造者や生産者ではない場合でも、OEM生産などを利用してオリジナル商品を開発・生産し、販売する。開発元として商品情報やサポート情報を丁寧で積極的に発信することで権威性を獲得する。
上記を実施してもまだ余裕がある場合には、通常の商用サイトと同様のコンテンツSEOを実施するのもいいでしょう。ただしコンテンツSEOを実施する場合でも、その重要な目的のひとつは被リンクや評判の構築、知名度の向上であることを忘れないでください。自身や自店の専門性のアピールにつながるコンテンツ作りを心がけましょう。
まとめ
中小のショップにとって自社ECサイトのSEOは非常に難しいのが現実です。クチコミが拡がりやすく肯定的な評判を高めやすいといった勝ちやすい特色を持った商材でない限り、大手ショップと真正面から張り合うことは現実的ではありません。そうした特色がない場合、ニッチを狙い、ロングテールのキーワードを着実に狙いましょう。
また肯定的な評判を集めるための施策は休むことなく続ける必要があります。有効な施策は、同梱物やメルマガを使ってレビュー投稿をお願いしたり、SNS投稿をお願いするハッシュタグキャンペーンを実施したり、話題を提供するソーシャルメディア最適化に取り組んだり、アフィリエイト広告を運用することです。
どんな有名ショップでも、スタート時には無名でした。そこからリピーターを増やし、クチコミを増やし、知名度を向上させ、良好な評判を築いていった結果として、今の姿があります。どんなショップもそうした取り組みを避けて通ることはできません。ECサイトのSEOでやるべきことはこの記事で紹介しました。あとは進めていくだけです。