検索エンジンはクエリを正確に処理するために、クエリの意図を判断できる必要があります。検索意図の分類は当初、検索エンジンの開発側の視点で、クエリの正確な処理のために考えられました。その後、検索マーケティングの視点からの有用な分類が登場し、今に至っています。この記事ではそうした検索意図の分類の歴史をひもときます。
- 2002年 ブローダーによる基本の3分類
- 2006年 コマーシャル検索インテントを加えた4分類
- 2013年〜 ローカル検索インテントを加えた4分類
- Google検索品質ガイドラインに見る変遷
- 2017年 マイクロモーメントの援用と誤解の拡散
2002年 ブローダーによる基本の3分類
検索意図を「ナビゲーショナル」「インフォメーショナル」「トランザクショナル」の3種類に分類する考え方は、2002年にAltavistaの研究担当副社長(当時)のアンドレイ・ブローダー博士1が発表した論文「A taxonomy of web search2」で示されました。その中でブローダー博士は次のように説明しています。
ウェブの文脈における「クエリの背後にある必要性」は、情報分野に関連したものであるとは限らない。そこで我々はクエリを、その意図だけに基づいて次の3種類に分類する。
- ナビゲーショナル・クエリ– 特定サイトに到達することを目的とする。
- インフォメーショナル・クエリ – 一つまたは複数のウェブページに存在すると想定される情報の取得を目的とする。
- トランザクショナル・クエリ – Webを利用した何らかの活動を行うことを目的とする。
「A taxonomy of web search」Andrei Broder
発表から20年以上が経った現在でも、この分類は検索エンジン側から視点で見るユーザーの検索意図の基本として用いられています。時代や環境の変化に応じて変化(現実の場所に訪問することを意図するVisit-in-personインテントが追加されるなど)しているものの、いまも基本はブローダーの3分類であることに変わりはありません。
2006年 コマーシャル検索インテントを含めた4分類
ブローダーによる検索意図の3分類が発表されてからわずか4年後にあたる2006年に、マイクロソフトのホンファ・ダイらの研究チームは、商業的な意図が含まれる検索クエリを機械学習によって抽出するモデルを発表3しています。これが、コマーシャル・クエリを含め、以下に示した4種類とする分類の始まりです。
- インフォメーショナル・クエリ
- コマーシャル・クエリ
- トランザクショナル・クエリ
- ナビゲーショナル・クエリ
コマーシャル・インテント(またはコマーシャル・クエリ)とは、インフォメーショナル・クエリとトランザクショナル・クエリが重なる部分に位置し、商取引のための調査を意図しています。別の言い方として、商業調査型インテント(Commercial investigation intent)と呼ぶことも一般的です。その例は次のようなものです。
- 自分に合う商品やサービスを探したい
- 売れ筋の商品やサービスのランキングを知りたい
- 購入を検討している商品やサービスの比較をしたい
- 商品やサービスの評判を知りたい
- 商品やサービスの価格帯を知りたい
- 商品やサービスの使い勝手を知りたい
- 販売者の評判を知りたい
- サポート情報や保証情報を知りたい
コマーシャル・クエリを含めて検索意図を4種類とする分類方法は、以下の図に示したようにマーケティング・ファネルとの相性が良いため、世界的には非常に人気が高い分類方法です。2010年代からは事実上、この4分類を用いるのが検索マーケティング業界におけるスタンダードとなっています。

この分類を用いることで、特にオンラインビジネスのように商圏の広いビジネスでは、コンテンツマーケティングや検索連動型広告の運用を計画的に実施しやすくなります。各インテントとマーケティングファネルの各段階、及びそれらの役割についてまとめたのが以下の表です。
| 検索意図 | ファネルの段階 | その段階の役割 |
|---|---|---|
| インフォメーショナル・クエリ | 認知 awareness | 生活者の疑問を解消したり課題を解決するコンテンツを通じて、自社やその製品やサービスの存在を認知してもらう。 |
| コマーシャル・クエリ | 検討 consideration | 自社やその製品やサービスの魅力や優位性を伝えるとともに、比較や検討の材料を十分に用意することで、高く評価してもらう。 |
| トランザクショナル・クエリ | 転換 conversion | 広告キャンペーンを実施したり、強力なクロージングを行うコンテンツを用意するなどして、購入に向けた最後の一押しをする。 |
| ナビゲーショナル・クエリ | 維持 retention | カスタマーサクセスのための役立つコンテンツを継続的に発信し、継続的なサイト訪問から関係の維持・発展させていく。 |
コマーシャルクエリを組み込んだ分類を用いることで、ファネルの各段階に応じた検索マーケティングを効率よく実施できます。具体的には、インフォメーショナル、コマーシャル、ナビゲーショナルの各段階にはSEOで対応し、トランザクショナルの段階には各種の広告で対応するなどの施策が考えられます。
コマーシャル・クエリでの検索を現在のユーザーの視点から見ると、自然検索の結果からあちこちのページを見て回って自分で調べたり比較するよりも、AIによる概要やAIモード、またはAIチャットに尋ねるほうが圧倒的に楽です。今後はAIに推薦されるSEOに注力しましょう。
2013年〜 ローカル検索インテントを含めた4分類
2013年、Googleはウェブ検索結果に地図カルーセル(現在はローカルパックと呼ばれています)を挿入し、ローカル検索結果を表示するようになりました。これを受けて、あらゆるローカルビジネスにとってローカル検索インテントは非常に重要なものとなり、検索マーケティングの分野もそれに対応しています。
店舗型であれ出張型であれ、地域に根ざした形で営業しているローカルビジネスは、前項で紹介したコマーシャル・クエリを含む検索意図の4分類からナビゲーショナル・クエリを除き、代わりにローカル・クエリを含めた4分類を用いるようになりました。それは以下のようなものです。
- インフォメーショナル・クエリ
- ローカル・クエリ
- コマーシャル・クエリ
- トランザクショナル・クエリ
ローカル検索インテント(またはローカル・クエリ)とは、特定の地理的場所に関連する情報やビジネスを探す意図のことです。地元の事業者を探すような場合、スマートフォンの位置情報を使用した検索は他の手段よりもはるかに効率的であるため、ローカル検索インテントは増加する一方です。この例には次のようなものがあります。
- 自分に好みや条件に合った旅行先や観光地や店を見つけたい
- 目的地周辺の観光名所やホテルや飲食店を知りたい
- 近くで開催されるイベントを知りたい
- 自宅に出張してくれる事業者に依頼したい
- いまいる場所の近くのカフェやレストランに行きたい
- レストランや美容院を探して予約したい
- フードデリバリーを注文したい
前項で紹介したコマーシャル・クエリを含む検索意図の4分類と同様、ローカル・クエリを含めた4分類もまたマーケティングファネルとの相性が良く、ローカルビジネスの検索マーケティングにおいては、このローカル・クエリを含めた検索意図の4分類がよく使われています。

ローカルビジネスがこの分類を用いることで、コンテンツマーケティングや検索連動型広告の運用を計画的に実施しやすくなります。各インテントとマーケティングファネルの各段階、及びそれらの役割についてまとめたのが以下の表です。各段階に応じたコンテンツ施策を考えるとよいでしょう。
| 検索意図 | ファネルの段階 | その段階の役割 |
|---|---|---|
| インフォメーショナル・クエリ | 認知 awareness | 生活者の疑問を解消したり課題を解決するコンテンツを通じて、自店やその製品やサービスの存在を認知してもらう。 |
| ローカル・クエリ | 評価 appraisal | 距離や交通の便、営業時間、評判などの情報から訪問先の候補として残してもらい、購入に向けた細かな検討に進んでもらう。 |
| コマーシャル・クエリ | 検討 consideration | 自店やその製品やサービスの魅力や優位性を伝えるとともに、比較や検討の材料を十分に用意することで、高く評価してもらう。 |
| トランザクショナル・クエリ | 転換 conversion | 割引などのキャンペーンやイベントを実施したり、それらを広告によって告知するなどして来店や予約を促進する。 |
Google品質評価ガイドラインに見る変遷
検索品質を評価するためには、ユーザーの意図の理解は欠かせません。Google検索品質評価ガイドラインの初期バージョンである2012年11月のVersion 1.04では「2.4 ユーザーインテントの分類:アクション・インフォメーション・ナビゲーション ─『Do-Know-Go』」の項で、ユーザーの意図を次のように説明しています。
- アクション・インテント – ソフトウェアをダウンロードする、オンラインでゲームをする、花を贈る、面白いビデオを探すなど、ユーザーは目標を達成したり、活動に取り組みたいと考えている。これらは「Do」クエリで、ユーザーは何かをしたがっている。
- インフォメーション・インテント – ユーザーは情報を見つけたがっている。これらは「Know」クエリで、ユーザーは何かを知りたがっている。
- ナビゲーション・インテント – ユーザーはウェブサイトやウェブページに移動したがっている。これらは「Go」クエリで、ユーザーは特定のページに行きたいと考えている。
Google検索品質評価ガイドライン Version 1.0 “2.4 Classification of User Intent“
上記のあと急速にスマホシフトが進行し、2015年にGoogleはマイクロモーメント(後述)を提唱しました。これを経た検索品質評価ガイドライン2016年3月版5では「Visit-in-personクエリ(訪問型クエリ)」が追加されました。また、Doクエリにはデバイスアクションを含むように変更されました。
- Knowクエリ – その一部はKnow Simpleクエリ(訳注:天気や株価や試合結果のような単純な質問)である。
- Doクエリ – その一部はデバイスアクション・クエリ(訳注:一例として「OK Google、電気を点けて」が挙げられる)である。
- ウェブサイト・クエリ – 特定のウェブサイトやウェブページを探している。
- Visit-in-personクエリ(訪問型クエリ)– 一部は特定の会社や組織を探しており、また一部は業種から探している。
Google検索品質評価ガイドライン2016年3月版 “12.7 Understanding User Intent“
この後は数年にわたって変更はありませんでしたが、2022年7月版6で更新され、Doクエリの記述が「その一部はデバイスアクション・クエリである」から「ユーザーが目標を達成するため、または活動に取り組むためのクエリである」と変わりました。DoクエリはVersion 1.0 に戻った形です。ここまでのGoogleによる分類をまとめると次のようになります。
| 検索意図 | 別名 | 内容 |
|---|---|---|
| インフォメーション | Knowクエリ | ユーザーは何かを知るために情報を見つけたがっている。インフォメーショナルクエリ。一部はKnow Simpleクエリ(天気や株価や試合結果のような単純な質問)である。 |
| アクション | Doクエリ | ユーザーは目標を達成したり、活動に取り組みたいなど、何かをしたがっている。トランザクショナルクエリ。一部はデバイスアクション・クエリ(例:「OK Google、電気を点けて」)である。 |
| ウェブサイト | Goクエリ | ユーザーは特定のウェブサイトや特定のウェブページに移動したがっている。ナビゲーショナルクエリ。 |
| Visit-in-person | – | ユーザーは現実の場所に行きたがっていて、場所や経路を調べている訪問型クエリ(ローカル検索クエリ)である。その一部は特定の会社や組織を探しており、また一部は業種から探している。 |
2017年 マイクロモーメントの援用と誤解の拡散

2015年、Googleはマイクロモーメント(Micro-Moments)という概念を発表しました。現在の私たちは、何かを知りたい、したい、買いたいとき、すぐにスマートフォンに手を伸ばします。情報を探したり、地元のお店を見つけたり、タスクを完了したり、または何かを購入するためにデバイスを手に取る瞬間が「マイクロモーメント」です7。
「マイクロモーメント」とは、人々が「何かをしたい」と思い、反射的に目の前にあるデバイスで調べたり、購入したりという行動を起こす瞬間です。
生活者の意図を捉えるマイクロモーメント(Micro-Moments)8
手元にスマホがあることで、生活者のマイクロモーメントは飛躍的に増えました。この結果、マーケターにとっては、検索を通じて生活者との接点を作るチャンスが飛躍的に増えました。以下に示す Know-Go-Do-Buy という4種類のマイクロモーメントはそれぞれ、検索が発生する瞬間を表しています。
- Knowモーメント(知りたい瞬間) – 何かを知るために調べる瞬間。どこにいても、何をしていても、何かわからないことに出会った瞬間、私たちはそれを知るためにスマートフォンを手に取って検索します。
- Goモーメント(行きたい瞬間) – 出先で近くのカフェを探したり、週末のディナーのための調度よいレストランを探したり、次の休暇の滞在先を選ぶなど、どこかに行こうとするとき、私たちはすぐに検索します。
- Doモーメント(やりたい瞬間) – 新しいレシピを試したり新しい工具を使うなど、何か新しいことにトライするとき、事前に、またはトライしている最中に、私たちはそのやり方やコツを手元のスマートフォンで検索します。
- Buyモーメント(買いたい瞬間) – 何かを買おうとしているとき、それが実店舗の中にいるときだったとしても、私たちは手元のスマートフォンで競合製品や価格を調べます。検索は私たちの買物と切り離すことができません。
私たち生活者はマイクロモーメントのたびに意思決定を繰り返し、そのたびに嗜好が形成されていきます。マーケターの目標はそれらの機会に対してできるだけ多くの影響を及ぼすことです。これは2011年にGoogleが提唱したZMOTに通じます。実際の購入や契約のずっと前の段階から、マイクロモーメントのたびに意思決定が繰り返されるのです。
Know-Go-Do-Buyのマイクロモーメントは検索をするタイミングを表すものです。検索意図の分類ではありません。検索意図の分類は、インフォメーショナル・クエリ、トランザクショナル・クエリ、コマーシャル・クエリ、ローカル・クエリ、ナビゲーショナル・クエリ、という5種類の分類を使いましょう。
Know-Go-Do-Buyのマイクロモーメントは検索意図ではないことに注意してください。これを検索意図の分類に援用するアイデアは2017年に僕が考案し、翌2018年にかけて複数の講演で発表したもの(一例としてWeb担当者Forumミーティング 2018 Autumnなど)が元になっています。
僕がKnow-Go-Do-Buyのマイクロモーメントを検索意図に援用するアイデアを発表した文脈は「検索意図によって検索結果の内容や画面レイアウトが変化することを説明する」というものです。これを2017年から2018年にかけて各地の講演で延べ2,000人程度に発表しました。
この発表から出所や文脈が省かれ、剽窃が繰り返されて拡散を続けるうちに、Google公式の分類であると誤認する人も現れ、日本だけのガラパゴス用語として定着してしまいました。しかしマイクロモーメントを検索意図の分類として用いるのは誤りですから海外には例がなく、標準はコマーシャル・インテントを含む4分類のほうです。
まとめ
検索意図とその分類には、検索エンジン側の視点によるものと、検索マーケティング側の視点によるものがあります。ユーザーの意図に合わせたニーズ・メットなコンテンツを的確に配信し、検索の機会をユーザーとの接点を作る機会として有効に活用していくために、自社の活動に合った分類を使うとよいでしょう。
- コマーシャル・クエリを含めた4分類 – 商圏の広いビジネスが効率的にコンテンツSEOを実施していく場合、この分類にしたがってコンテンツ計画を立てることが有用です。この4分類は商圏の広いビジネスにとってのマーケティングファネルと重なる部分が多く、ファネルの各段階ごとの施策と連動させやすいためです。
- ローカル・クエリを含めた4分類 – ローカルビジネスにとって効率的なのがこの分類です。この分類にしたがってコンテンツや広告を配信していくことで、マーケティングファネルの各段階に応じた施策を的確に実施できます。この4分類は、ローカルビジネスがインターネットを活用する場合の強力なツールになるでしょう。
一般によく使われるのは上記のどちらか、特に前者です。しかし僕は様々なウェブサイトに関わっている立場上、上記の分類に出てくる5種類のクエリインテントすべてを含めて、インフォメーショナル、トランザクショナル、コマーシャル、ローカル、ナビゲーショナル、という5種類の分類を使っています。
それと、Know-Go-Do-Buyの4分類を検索意図として扱うのは出所や文脈の欠落した誤解ですので、できたらもう使わないでください。特にSEO関連の事業者さんでサイト上にKnow-Go-Do-Buyを検索意図とした説明がある場合、その説明は誤りですから修正することをおすすめします。
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脚注
- Andrei Broder – Wikipedia ↩︎
- 「A taxonomy of web search」Andrei Broder著(PDF) ↩︎
- Detecting online commercial intention (OCI) | Proceedings of the 15th international conference on World Wide Web ↩︎
- Google検索品質評価ガイドライン 2012年11月 Version 1.0(Wayback Machine・PDF) ↩︎
- Google検索品質評価ガイドライン 2016年3月版(Wayback Machine・PDF) ↩︎
- Google検索品質評価ガイドライン 2022年7月版(Wayback Machine・PDF) ↩︎
- Why Every Business Must Embrace Personalization And Micro-Moments ↩︎
- 生活者の意図を捉えるマイクロモーメント(Micro-Moments)| Think with Google ↩︎
住 太陽