論理構造を伝えるパラグラフライティングでSEOの効果を上げる

パラグラフ・ライティングによるSEO

一つのパラグラフ(≒段落)では一つのトピックだけを扱い、複数のパラグラフを組み合わせていくことで論理展開していく文章作成手法を「パラグラフライティング」といいます。明確な構造を持つパラグラフライティングは読者と検索エンジンの両方にとって理解が容易であり、導入することでSEOライティングを効果的にします。

パラグラフライティングとは

パラグラフライティングとは、一つの話題を扱う文の固まりであるパラグラフ(≒段落)を組み合わせて文章を作成する文章作成手法です。欧文ライティングの一般的な手法ですが、論理構造の表現に優れており、日本語でも学術論文などはこの形式で書かれます。また後述するように、HTMLはパラグラフライティングと同様の構造を持っています。

パラグラフライティングは文書の論理構造を明確にわかりやすく読者と検索エンジンに伝えることができるため、SEOライティングにおける必須の文章作成手法です。読者も検索エンジンも、パラグラフに含まれているそれぞれの文に関連があることを理解しますし、パラグラフの前に見出しがあればセクションの階層構造を理解できます。

そもそもHTML言語における<p>要素[1]は “Paragraph”の略であり、パラグラフを表しています。パラグラフを正しく扱うことは、タイトル要素見出し要素を正しく扱うのと同様に、アクセシビリティやユーザーエクスペリエンスに影響します。この意味では、パラグラフライティングをHTMLの基本の一部と考えても良いかもしれません。

パラグラフとは

パラグラフとは、複数の文で構成され、一つのトピックのまとまりであることを示す文章の単位です。日本語の「段落」と似ていますが、日本語の「段落」にはない「一つのパラグラフでは一つのトピックだけを扱う」という明確なルールがあることが異なります。パラグラフは段落とは違い、一つのパラグラフで複数のトピックを扱うことはありません。

パラグラフの決まった構造

パラグラフには決まった構造があります。パラグラフの先頭にはトピックセンテンス(主題文)が置かれ、次いでサポートセンテンス(支持文)が続き、コンクルーディングセンテンス(結論文)で終わります。このような決まった構造によって論理展開が明確になり、読者や検索エンジンは内容を理解しやすくなります[2]

  • トピックセンテンス – そのパラグラフで扱う主な考えを簡潔に紹介します。そのパラグラフがどのようなトピックを扱うのかを明確に述べることで、読者がパラグラフの残りの部分を理解しながら読み進めるための心の準備をします。
  • サポートセンテンス – トピックセンテンスの主張を詳しく説明したり、主張を裏付ける根拠を提示したりするのがサポートセンテンスの役割です。サポートセンテンスによって、読者は書き手の主張に納得しながら理解していきます。
  • コンクルーディングセンテンス – パラグラフでの主張を締めくくります。コンクルーディングセンテンスにはそれまでに提示した内容の要約や最後の補足などを記述し、次のパラグラフへとつなぎます。

トピックが変わるときが、パラグラフを改めるタイミングです。現在のトピックが終わり、次のトピックに移るとき、コンクルーディングセンテンスで現在のパラグラフを閉じます。新しいパラグラフでは、その新しいパラグラフの内容を要約するトピックセンテンスから開始します。こうしてパラグラフを組み合わせて論理を展開します。

HTMLの論理構造とSEO

パラグラフはページのアウトライン(論理的な階層構造)を作る最小単位です。複数のパラグラフが集まってサブセクションが形成され、複数のサブセクションが集まると上位のセクションが形成されます。複数のセクションが集まったものがページです。HTMLタグも含めて図にすると次のようになります。

見出しレベル、セクション、アウトラインの例

上図からもわかるとおりHTMLは論理的な階層構造を表現する文書型であり、その構造はパラグラフライティングを踏襲しています。このためパラグラフライティングを使って書き、適切にマークアップすることで、人間の読者だけでなく検索エンジンにも構造を正確に伝えることができますSEOを実施するとき、パラグラフライティングは欠かせません。

メリット

パラグラフライティングによってページが構造化され内容が理解しやすくなることは、SEOを効果的にします。先述したように検索エンジンが内容を正確に理解しやすくなるだけでなく、ユーザーエクスペリエンスの向上が直帰率の低下や滞在時間の延長といった良好なシグナルを生むからです。パラグラフライティングの主なメリットは次の通りです。

  • 大切なポイントが短時間で伝わる – 読者はパラグラフの先頭にあるトピックセンテンスを拾い読みしていくだけで、大切なポイントだけを素早く理解できる。
  • 伝えたい内容が確実に伝わる – 明快なロジックを繰り返して文書構造が作られるため、読者による誤解を少なくし、理解をより確実にできる。
  • 検索エンジンが内容を評価しやすい – パラグラフの先頭に置かれたトピックセンテンスやパラグラフごとの明快なロジックは、検索エンジンも正確に評価しやすい。
  • 効率的に書くことができる – パラグラフライティングは、アウトラインから見出し、トピックセンテンス、サポートセンテンスと決まったパターンで執筆が進むため、慣れた書き手にとっては執筆が速く、生産性が高まる。

パラグラフライティングは内容が明快で一意的に伝わる特長があります。ローコンテキストで主張の明確な欧文のルールに近い構成を採るためです。この結果、人間の読者にとっても検索エンジンにとっても、誤解が少なく理解しやすい文章を作ることができます。このような一石二鳥が狙える文章作成手法であり、導入しない理由はありません。[3]

パラグラフの書き方

パラグラフは、映画における一つ一つのシーンや歌詞の一節一節と同じように、優れた全体を構成するための要素です。パラグラフは、個々の文の小さなアイデアをまとめ、ページというより大きなアイデアへと結び付けます。理解を目的とした文章の作成には、パラグラフの理解が不可欠です。[4][5]

一つのパラグラフに一つのポイント

一つのパラグラフに含まれる各文は、共通する一つの主要なポイントに関連している必要があります。パラグラフに含まれる複数の文はすべて、そのパラグラフの核となるテーマを中心に展開します。それぞれの文が互いに組み合わさって段落の核となるテーマを伝えていくのです。

同様に一つのページに含まれる各パラグラフも、共通する一つの主要なポイント(そのページのテーマ)に関連している必要があります。ページに含まれる複数のパラグラフはすべて、そのページの核となるテーマを中心に展開します。それぞれのパラグラフが連携して、ページのテーマを伝えていくのです。

トピックセンテンスで要点を伝える

トピックセンテンスでは、そのパラグラフで扱う要点を紹介し、パラグラフの概要を伝えます。トピックセンテンスにすべてを詰め込もうとするのではなく、読者が残りの内容を読んでいくための準備となる程度の詳細度で十分です。そのパラグラフで説明する事柄を宣言することがトピックセンテンスの役割です。

読者はトピックセンテンスを読んで、その段落の続きを読む必要があるかどうかを判断することもできます。読者にとって既知の事柄が説明されるようなら、その段落の残りを読み飛ばすことを選択できるのです。このように読者が要点を素早く理解することを助けることもまたトピックセンテンスの役割です。

サポートセンテンスで詳細を説明する

パラグラフの2番目の文から始まるサポートセンテンスでは、要点を詳しく説明します。トピックセンテンスに収まらなかった情報はすべてここに記述します。サポートセンテンスの目標は読者の理解を完全なものにすることなので、他の情報源からの引用、統計、調査結果、実例など、トピックセンテンスの裏付けをどんどん提示します。

コンクルーディングセンテンスでまとめる

コンクルーディングセンテンスでは、パラグラフの要点を要約または評価して終わります。ただし、要点を説明し直すことが必ずしも必要なわけではありません。要約によって冗長になるようなら、サポートセンテンスの続きとして最後のサポートを述べたところで文を終えることも可能です。

そのパラグラフの要点について説明すべきことをすべて説明し終えたあと、段落が長すぎるように見える場合は、読みやすいように段落を別のトピックと段落に分割することを検討できます。または、主張を強くサポートしない文を削除することもできます。不要な文を削除すれば、それだけメインの主張が強調されます。

よくある疑問

パラグラフは、ページ上でテキストを分割してテキストを読みやすくするだけのものではありません。パラグラフは主張の構成要素であり、パラグラフライティングはそれらの各要素がどのように連携して論理構造を形成するかを表現します。パラグラフライティングの論理構造について知っておくべき疑問とその答えを以下に示します。[6]

一つのパラグラフに適切な文の数は?

パラグラフの長さに厳密な決まりはありませんが、通常は3~5文で十分です。ただし短すぎるのは間違いです。1文からなるパラグラフには論理構造がなく、また、流し読みや飛ばし読みができないため、パラグラフライティングのメリットが得られません。短くても3文程度は必要でしょう。

短すぎるパラグラフがあるのですが?

アウトラインを計画しているときには一つのパラグラフとして十分に見えたものが、実際に書いてみるとあまり役に立たない断片になって残ることがあります。この場合、別のパラグラフにふさわしい場所があればそこに統合し、ふさわしい場所がなければ削除するとよいでしょう。

それよりもよくあるのは、証拠の提示や説明が十分でないことです。この場合、読者からの想定質問に答える形で証拠の提示や説明を追加するとよいでしょう。想定質問とは「それはどういう意味ですか?」や「それはなぜですか?」や「根拠または典拠は何ですか?」などです。

長すぎるパラグラフがあるのですが?

重要ではない関連性の低い資料が含まれているか、または、パラグラフに一つではなく二つの要点が述べられている可能性があります。各文を見て、それが本当に必要な文なのか、削除すると全体的な要点が損なわれるのかを判断し、削除が可能なら削除し、削除できないならパラグラフを二つに分けるとよいでしょう。

パラグラフライティングのおすすめ書籍は?

倉島保美(著)『論理が伝わる 世界標準の「書く技術」(ブルーバックス新書)』です。コンパクトな新書版で読みやすく、内容は極めて具体的で、少々くどさを感じるほど何度も繰り返し要点が説明されるため、基本的な考え方が頭に叩き込まれます。読後は練習あるのみですが、それも特に苦にはなりません。

筆者個人的には現在のところ、WebライティングやSEOライティングに取り組む場合であればこれ以上の良書はないと考えています。本書は特に「Webライティング」や「SEOライティング」を冠したものではありませんが、「長文を読むのが苦痛で可能な限り楽に速く読みたい」というWebの媒体特性に合った文章が書けるようになります。

まとめ

HTML言語においてパラグラフを表す<p>要素は、あらゆる要素の中でも最も基本的かつ多用されるものの一つであり、これを正しく使うことはページ全体の品質を担保する上で極めて重要です。<p>要素の内容となるテキスト、つまりパラグラフを適切に使うことは、見出しタグで論理構造を表現する上での前提でもあります。

<p>タグを正しく使うことで、ユーザーエクスペリエンスは向上し、SEOにも効果的に働きます。そのためにも、パラグラフライティングを学び、習慣化することが望まれます。もしこれまでパラグラフを意識せずに文章を書いていたなら、今後はパラグラフを意識することで、より大きな成果を手にすることができるでしょう。