有用で信頼できる高品質なコンテンツはSEOにとって必須ですが、その制作は非常に大変な作業です。膨大な時間と手間がかかり、専門知識を必要とします。しかしこれを乗り越えれば、SEOの成功だけでなく、専門家としての地位の確立にもつながります。
目次
概要
有用で信頼できる高品質なコンテンツはSEOにとって必須ですが、その制作は非常に大変な作業です。膨大な時間と手間がかかり、専門知識を必要とします。正確性や明確性、内容の包括性など、求められる要件を満たしたコンテンツの制作は、片手間でできることではありません。この点についてGoogleは次のように説明しています。
高品質のコンテンツを作成するには、時間、労力、専門知識、才能 / スキルのうち少なくとも 1 つが十分にあることが必要です。コンテンツが事実として正確で、記述が明確で、内容が包括的であることを確認してください。
テーマに応じた適切な量のコンテンツを提供する | Google 公式 SEO スターター ガイド[1]
この記事では、そうした大変な作業を経てクリアすべき品質について解説します。素早く簡単に片付ける方法も、外部の執筆者に丸投げする方法もありません。専門知識を持った人自身が、時間と手間をかけて取り組むべき課題を明らかにすることがこの記事の趣旨です。この記事は次のような流れで進みます。
- コンテンツという言葉の意味を確認します。私たちがサイトに掲載するコンテンツは、現在または将来のお客さまに対して価値のある知識や体験を届け、評価していただくものだということを再確認します。
- 複数のGoogle公式のドキュメントを横断しながら、Googleが示しているコンテンツ作成の要件を紹介していきます。検索結果の上位に掲出するコンテンツに対してGoogleがどのようなことを求めているのかを再確認します。
- 最後に人間による評価です。そのコンテンツが有用で信頼できる品質の高いものであるかどうかを評価するのは人間です。実際の人間からの評価や行動を引き出す取り組みを確認します。
検索結果の上位に掲載されるコンテンツを作成することは、長く苦しい道のりです。しかし、それが必要なのであれば、専門知識を持ったあなたが自分でやるしかありません。Googleは以下の引用で「有用で信頼できる情報を検索結果の上位に掲載」と述べていますが、その有用で信頼できる情報は、それを持つ人にしか発信のしようがないのです。
Google の自動ランキング システムは、検索エンジンでのランキングを上げることではなく、ユーザーにメリットをもたらすことを主な目的として作成された、有用で信頼できる情報を検索結果の上位に掲載できるように設計されています。
有用で信頼性の高い、ユーザーを第一に考えたコンテンツの作成[2]
コンテンツの定義
現在の私たちが使っている「コンテンツ」という言葉は、「メディアを介して流通するものの内容」を意味する「Media Content」を略したものであり、英単語「Content」が持つ元来の意味である「(容れ物の)内容」といったものからはかなり拡張された概念です。まずは、このコンテンツという言葉を簡潔に定義します。
- コンテンツとは
- 教養または娯楽に属する著作物であって、受け手の文脈に応じた価値のある情報や体験を提供するもの。
上記の定義の前半(教養または娯楽に属する著作物である)は日本国内の定義から、後半(受け手の文脈に応じた価値のある情報や体験を提供する)は英語圏の定義から、それぞれ引用しています。以下、日本国内と英語圏、それぞれのコンテンツの定義について説明していきます。
日本国内での定義
日本においてコンテンツは、コンテンツそのものが持っている形態によって定義されています。「コンテンツの創造、保護及び活用の促進に関する法律(コンテンツ法)[3]」の第2条(定義)によれば、コンテンツとは次のようなものを指します(強調は筆者による)。
「コンテンツ」とは、映画、音楽、演劇、文芸、写真、漫画、アニメーション、コンピュータゲーム、その他の文字、図形、色彩、音声、動作若しくは映像、若しくはこれらを組み合わせたものであって、人間の創造的活動により生み出されるもののうち、教養又は娯楽の範囲に属するものをいう。
「コンテンツの創造、保護及び活用の促進に関する法律[4]」第二条の一
上記引用中の「映画、音楽、演劇、文芸、写真、漫画、アニメーション、コンピュータゲーム、その他の文字、図形、色彩、音声、動作若しくは映像、若しくはこれらを組み合わせたものであって、人間の創造的活動により生み出されるもの」は著作物[5]をを指しています。したがって上記の定義は、シンプルに次のように言い換えることができます。
コンテンツとは、教養または娯楽を提供する著作物である。
なおここでいう「教養」は、高度に文化的な知識だけを指す狭義の教養ではなく、仕事や生活の役に立つ実用的な知識を含む広義の教養であると考えてよいでしょう。というのも英語圏では「Knowledge and/or Entertainment(知識と娯楽)」のような表現が慣用的にみられ、「教養又は娯楽」という表現はそれを参考にしたと考えられるためです。
ビジネスのサイト上に掲載するコンテンツという文脈では、娯楽に属するコンテンツの提供は難易度は高いため、現実的には教養に属するコンテンツを提供していくことになるでしょう。より具体的には、業務に関連した実用的な知識の提供であって、他社が提供するものよりも正確で詳細で公正なものを提供する、と考えることができそうです。
英語圏での定義
日本ではコンテンツが形態によって定義される一方、英語圏の場合にはコンテンツの受け手の文脈や、受け取る価値によって定義されます。英語版 Wikipedia[6]によれば、コンテンツとは「特定の文脈において、受け手に対して価値を提供する情報や体験」であるといいます。
情報や体験の価値について考えるとき、受け手の文脈を無視して考えることはできません。なぜなら、情報や体験の価値には受け手の文脈によって変化する性質があるためです。このためコンテンツにおける「情報や体験の価値」を考えるためには、受け手の多様な文脈を考慮しなければならず、単純な一言で定義することは困難です。
- 状況に合っていること(Relevant)
- 時宣に合っていること(Timely)
- 明確な目的があること(Purposeful)
- 便利・有用であること(Useful)
- 実践的であること(Practical)
- 機能的であること(Functional)
- 行動を喚起すること(Compelling)
- 啓発的であること(Enlightening)
- 独自性があること(Original)
- 見識を含んでいること(Opinion Charged)
- 愉快であること(Entertaining)
- 魅力的であること(Engaging)
- 信頼できること(Reliable)
- 興味を引くこと(Interesting)
- 洞察的であること(Insightful)
- 賢く手際がいいこと(Clever)
- 見事であること(Beautiful)
- 結果を出すこと(Outcome Oriented)
上記は記事「What is Content? Learn from 40+ Definitions[7]」で様々な人物によって挙げられていたコンテンツの価値の定義です。英語圏においては、受け手の文脈に応じて、上記のいずれかまたは複数の価値を提供していることがコンテンツの定義であるといいます。
英語圏で開発されている検索エンジンが「高品質なコンテンツ」というときに指しているのは、上記リストのような価値を提供するコンテンツでしょう。SEOでは、日本での「教養または娯楽に属する著作物」という定義に加え「受け手の文脈に応じた価値のある情報や体験を提供する」という英語圏の定義でコンテンツをとらえる必要がありそうです。
Googleによる指針
Googleはこれまで、有用で質の高いコンテンツについて説明する資料を数多く公開してきました。各資料に個別に目を通すのは大変ですし、さらに各資料の内容はかなりの部分で重複もありますので、それらを見やすくまとめました。なお、参考にした資料は以下のものです。
- Google 公式 SEO スターター ガイド[8]
- Google Search Quality Ratings Guidelines[9]
- 有用で信頼性の高い、ユーザーを第一に考えたコンテンツの作成[10]
- 2022 年 8 月の Google の有用なコンテンツの更新についてクリエイターが知っておくべきこと[11]
- 質の高いサイトの作成方法についてのガイダンス[12]
- 1.4 Create valuable content – Search Console Help[13]
E-E-A-T
- 専門性が明確である – そのトピックの専門家または愛好家によってコンテンツが作成または編集されている。
- 著者が明確である – コンテンツの著者が誰であるかが明確で、著者の専門分野に関する情報をもたらす紹介がある。
- 信頼され認知されている – サイトを調査すれば、対象トピックの権威としてサイトが信頼されている、または広く認知されていることがわかる。
- 質の高い情報源を参照している – 情報の出典を明記しており、質の高い情報ソースにリンクしている。
- 経験に基づく特別な知識 – 実体験や深い知識を明確に示している。
価値と品質の提供
- 適切な量のコンテンツ – 時間、労力、専門知識、才能/技能が十分に投入されており、内容に不足がなく、ページの目的が果たされている。
- 詳細で包括的な説明 – 実質的な内容をともなう詳細または包括的な説明が記載されている。
- 共有したくなる内容 – 自分でもブックマークしたい、また友人に教えたりすすめたりしたいと思えるページになっている。
- 紙媒体にも掲載できる価値 – 雑誌、百科事典、書籍に掲載または引用されるような価値がある。
- コンテンツ制作の適切性 – 外部委託などで大量に制作されていたり、雑に、または急いで制作されたような印象を与えない。
- 文法や綴りが正確である – 文章が丁寧に書かれ、きちんと推敲された上で公開されており、明らかな事実誤認がない。
- 公平性 – 記事が公平に書かれている。
理解のしやすさ
- トピックが明快に整理されている – パラグラフや見出しを使ってコンテンツを論理的なかたまりに分けることで、ユーザーが必要な情報を迅速に見つけやすくなっている。
- 見出しやタイトルの有用性 – メインの見出しやページタイトルは、内容を要約して説明する有用なものになっており、誇張されていない。
- 気が散る広告がない – ユーザーが注意をそらされたり、コンテンツを読むのを邪魔されたりするような広告がない。
- 効果的なアンカーテキスト – リンク先のページの内容に関する基本的な情報がわかるアンカーテキストが書かれている。
- 適切なスタイル – リンクと通常のテキストが紛らわしいなどスタイルに関する問題がない。
オリジナリティ
- 独自の情報がある – 独自の調査や取材に基づく分析、論考、新たな視点、深い見識や洞察などの独自の情報で構成されている。既存のコンテンツのコピーやバージョン違いや単なる書き直しではない。
- 独自の付加価値がある – コンテンツが他のソースを参考にしたものである場合は、単なるコピーや書き換えではなく、付加価値とオリジナリティを十分に示している。
- 他にない価値がある – 検索結果に表示される他のページと比較して、実質的な価値を提供している。
有用性
- 対象ユーザーへの有用性 – 特定のユーザー層が訪問したとき、コンテンツを有用だと感じることができる。
- テーマと目的 – サイトには主要なテーマがあり、人の役に立つことを目的としてコンテンツが作られている。
- ユーザーの目的達成 – コンテンツを読み終わったユーザーは目的を果たすのに十分な情報を得たと感じることができ、他のソースからより良い情報を得るために再び検索する必要があるとは感じない。
- 有益な時間 – コンテンツを読んだユーザーは、有益な時間を過ごせたと感じることができる。
人間による評価
前項で述べた各指標のうち、ページそのものの性質を元にコンピューターが適合性を判断できるものもあります。例えば、綴りや文法の正確性や、ページレイアウトの適切性、独自の情報の有無などは、ページそのものの性質を元にコンピューターが判断・評価することが可能でしょう。
しかし最終的には、実際の人間によるコンテンツの評価を各種のシグナルとして受け取って検索結果に活用する、というのがGoogleのスタンスです。コンテンツは実際の人間のために作られているものですから、その人間がどう評価するかが最も大切な要因であることは当然でしょう。例えばE-E-A-Tについては下記のような説明があります。
どのコンテンツが専門性、権威性、信頼性を示しているか判定するために役立つシグナルを特定します。たとえば、その判定を支援するために使用している要因の 1 つに、そのコンテンツへのリンクまたは言及が他の著名なウェブサイトに含まれているか把握するということがあります。
ランキング結果 – Google 検索の仕組み[14]
PageRank(実際の人間によるリンクという行為を一種の支持投票とみなした)に見られるように、Googleは創業時から一貫して、実際の人間による評価を検索結果に適用することで、検索の精度を高めています。現在でもリンクはもとより、ユーザー行動やサイテーションなど、実際の人間のクチコミによる自然な評判を重視しています。
人を引きつける有益なコンテンツを作成すれば、このガイドで取り上げている他のどの要因よりもウェブサイトに影響を与える可能性があります。ユーザーは閲覧したときに良いコンテンツだと感じると、他のユーザーに知らせたいと思うものです。その際、ブログ投稿、ソーシャル メディア サービス、メール、フォーラムなどの手段が使われます。
クチコミによる自然な評判はユーザーと Google の両方に対してサイトの評価を高めるのに役立ちますが、質の高いコンテンツなしにそうした評判が生まれることはめったにありません。
興味深く有益なサイトにする | Google 公式 SEO スターター ガイド[15]
上記引用でGoogleは「クチコミによる自然な評判」の重要性に言及しています。有用で質の高いコンテンツの最後の要件は「クチコミを発生させる」であると考えておけば間違いはないでしょう。非常にハードルの高い要件ですが、少しでもクチコミを発生しやすくするためにできることもあります。
人間からの評価を引き出す
Googleは公式ドキュメントの中で「コンテンツを効果的に宣伝することで、同じテーマに興味を持っている人たちにより早く発見してもらうことができます」としています[16]。その効果的な宣伝の方法とは、コミュニティへの参加やSNSの活用です。様々なドキュメントの中でGoogleは、次のような言及をしています。
自分のサイトで紹介しているサービスや製品について、同じような志向の人々と交流できるコミュニティに参加しましょう。
主なベスト プラクティス | Google 検索セントラル[17]
SNSはユーザー同士の交流と共有を中心に構築されており、関連するコンテンツに関心を持つ人々のグループと容易に出会うことができます。
Know about social media sites | SEO Starter Guide: The Basics[18]
自分のサイトと同様の分野のトピックを扱っているサイトは多数あるはずです。一般に、そのようなサイトとのコミュニケーションを開始すると効果的です。
サイトの関連コミュニティのユーザーにアプローチする | Google 公式 SEO スターター ガイド[19]
コンテンツを軸にクチコミを発生させるためには、あなたのコンテンツを話題にする場が必要です。それは、あなたのコンテンツと関連するテーマに興味を抱く人々が集まるコミュニティです。あなたと同じようなテーマで書いている人々が、お互いのコンテンツについて意見を言い合うような場を探し、参加しましょう。なければ自分で作りましょう。
そうした場であなたのコンテンツが高評価を受ければ、コミュニティのメンバーを起点に、コミュニティの外部へとクチコミが拡がっていきます。コンテンツが評判を獲得していくためには、話題の中心となるコンテンツが必要だけでなく、それを話題にするコミュニティもまた必要なのです。
まとめ
信頼できる良質なコンテンツを作るためには厳しい要件があります。そのコンテンツに関連する十分な専門知識が必要なだけでなく、大変な手間もかかります。ある種の才能も必要でしょう。また、コンテンツがクチコミによる自然な評判を獲得していけるようにするためには、SNSやフォーラムなどでの著者のプレゼンスも必要です。
しかしこれを乗り越えれば、SEOの成功だけでなく、専門家としての地位の確立にもつながります。実際の人間(現在または未来のお客さま)による厳しい目で見ても、役に立ち信頼できる質の高いコンテンツだと評価されるようなコンテンツを作成し、発信しましょう。コンテンツはSEOにとって最重要です。だからこそ専門家としての矜恃が試されるのです。