AI検索で変化するSEO 知識提供コンテンツSEOは衰退に向かう

AI検索で変化するSEO 知識提供コンテンツSEOは終焉に向かう

2024年8月から日本でも展開されている「AIによる概要」と、2025年5月に北米で始まった「AIモード」のようなAI検索が普及していくにつれて、SEOにはどのような変化が起きるでしょうか? この記事ではその変化を予測します。最大の変化は「知識提供型のコンテンツを使ったコンテンツSEOが衰退すること」です。

AI検索の普及はゆっくりと確実に進む

AI検索はゆっくりと、しかし確実に普及していくでしょう。ユーザーは使い慣れたものを好みますから、使い慣れたウェブ検索からAI検索への移行が一気に進むことはありません。とはいえ、ゆっくりと確実に、AI検索への移行は進むでしょう。というのも私たちユーザーは本質的に怠惰であり、少ない手間で済むほうを選ぶからです。

AI検索はユーザーの手間を省きます。現状すでにAIによる概要1は、ユーザーが個々のリンク先にアクセスする手間と、リンク先のページで知りたいことが書かれている部分を探す手間を省いています。北米で始まったAIモード2が日本語環境にも展開されれば、キーワードを変えて何度も検索する手間も省かれます。

現状のところAIによる概要の精度はいまひとつで、人々が信頼するようになるにはまだ時間がかかりそうです。北米で始まったAIモードも現状ではあまり使われていないようです。しかし精度向上とユーザーの慣れによって少しずつ、しかし確実に普及していくでしょう。AI検索が多くの人に使われるようになるのは間違いありません。

知識提供型の「コンテンツSEO」は力を失う

GoogleでCEOを務めるサンダー・ピチャイはThe Vergeのインタビュー3で「5年後にはGoogleはウェブに大量のトラフィックを送っているだろう」と言っていますが、これを簡単に信じることはできません。5年もあれば人々はより怠惰になり、よりリンクをタップしなくなるだろうと考えられるからです。

AI検索の普及によってSEOが大きく変化するのは避けられません。少なくとも、現時点で観測できることだけを見ても、知識提供コンテンツによるSEO集客が衰退していくだろうことは間違いありません。知識の獲得は将来、AIが生成する回答で済まされるようになるでしょう。筆者の個人的な考えでは、SEOには次のような変化が起こります。

  1. 知識提供コンテンツへのアクセスは消滅していく —— 知識を知りたい意図で検索するユーザーは、検索結果画面に生成された「AIによる概要」や将来の「AIモード」などで満足するようになり、リンクをタップしなくなっていく。知識を説明するコンテンツはAIの養分になる。
  2. 商品や業者を探す検索でいかに露出するかの競争になる —— 何かを買いたい意図で商品や業者を探す検索では依然としてリンクがタップされる。そうした検索でAIに推薦されるためには、地域や業界で知名度があり支持されていることをサイテーションや被リンクで裏付ける必要がある。
  3. 広報活動や社交活動がSEOの中心になっていく —— 地域や業界での実質的な存在感を高める活動がSEOの中心になっていく。地域や業界の人々と交流し、イベントなどの活動に参加し、役員などの面倒な役割を引き受け、話題を提供するなど、クチコミや報道を促進する広報活動や社交活動が最重要課題となる。

すでに起きつつある変化は知識提供コンテンツへの検索トラフィックの減少です。「○○とは」や「○○ 意味」のように意味を説明するコンテンツへの検索トラフィックは現時点ですでに減少しつつあり、近い将来にはほとんどなくなるでしょう。そうしたものはAIによる概要で用が済み、人々はそれに慣れるだろうからです。

単なる言葉の意味よりも複雑な概念や方法を説明するコンテンツでは、いくらかの検索トラフィックが残るでしょう。しかしそれはAIが生成した回答にユーザーが満足しなかった場合にしか発生しませんから、ユーザーの意欲の高さとAIの精度の低さに依存しており、過度な期待はできません。検索結果からの流入は大幅に減るでしょう。

AIに引用されることを狙うLLMOやGEOの効果

AIが生成する概要に引用されるとき、もし自社のブランド名と共に引用されるのなら、引用されることに意味があります。たとえば「SEO専門家の住太陽は『○○』と述べている」や「SEO専門サイト ボーディーSEOでは『○○』と記述されている」のような直接引用なら、ユーザーとブランドの接点が作れるため、大きな意味があります。

しかしAIが生成する概要は現状のところ、インライン引用やブロック引用のような直接引用は行わず、引用元の文章を要約するなど書きかえて用いる間接引用(パラフレーズ)の形式を取っています。引用元の紹介は参考文献の形で小さくリンクを表示するだけ(下図)ですから、これではユーザーとブランドの接点が作れたとは言えません。

AIによる概要での引用元の表示

昨今ではGEOやLLMOなどと称して「AIに引用されるための最適化」を称揚する動きがありますが、それが仮にうまくいってAIに引用されたとして、その形式が上図に示したような間接引用なら、ブランドとの接点を作る効果はなく、AIによる引用を得るために投下した手間や時間や金銭などの費用に見合う効果はないでしょう。単にAIの養分になるだけです。

AI時代に注力すべきSEOの予測

先にも述べたように、知識を提供するコンテンツを使ったいわゆる「コンテンツSEO」は、今後の取り組みとして有望ではありません。同様にGEOやLLMOも、知識を調べる意図の検索を狙う限りはブランド接点になりにくく、費用対効果は悪いでしょう。長らくSEOの主役だった「知識提供コンテンツ」ですが、ついに主役の座を降りるときが近づいています。

では、知識を調べること以外で、検索エンジンを使うシーンとはどのようなときでしょうか? すぐに思いつくのは「自分と似た状況にある他の人の体験談を見て追体験したい」というニーズと「自分と似た課題を解決した他の人や会社の事例を見て確認したい」というニーズです。そして「適切な業者を選びたい」ニーズもあるでしょう。

そうしたニーズを満たすコンテンツを作ることや、自社が適切な業者であることを裏付ける証拠をウェブ上に広げていくことが、今後のSEOの中心的な取り組みになっていくでしょう。そのために何ができるかを以下に見ていきます。繰り返しですが、単なる知識の提供はこれからのSEOの本流ではなくなるからです。

個人の体験談を共有する

一人一人の個人の体験談を探す検索は、今後も一定以上の検索流入を見込めそうです。私たちは、自分と似た背景や状況にあり、自分と似た課題や葛藤を抱いている人の体験を知りたいと思うものです。こうしたニーズは、AIが生成するまとめや要約では用が足りず、実際の体験者の生の声を見る動機があります。

こうした個人の体験談が有用になるテーマは幅広く、購入記録や旅行記から、受験記や闘病記や家事事件の顛末記まで、幅広いテーマがあり得ます。体験記は個人ブログのSEOに最適です。背景事情から葛藤、選択、行動、結果までのストーリーを共有することで、検索からの流入を獲得していける可能性は高いでしょう。

個別の事例を紹介する

個々の事例を探す検索も、一定以上の検索流入を見込めるテーマです。自分と似た事例がないかを探すのは、その主体が法人であれ個人であれ、検索ニーズがあります。複雑な事情が絡むものや大きな金額がかかるものを中心に、AIが生成するまとめや要約だけでは用が足りず、個々の事例を詳しく見たい動機があります。

カスタムメイド製品の製作事例から、ソフトウェアやシステムなどの導入事例、住宅や店舗や工場の施工事例、中古品の買取事例など、事例がお客様の参考になる分野は幅広くあります。個人の体験談の場合と同様、背景事情から葛藤、選択、行動、結果までのストーリーを共有することで検索流入が得られます。

AIのレコメンドを獲得する

AI検索の時代の本命はこれでしょう。「ハウスクリーニング業者のおすすめ」や「○○市でおすすめのハウスクリーニング業者」といったクエリで、AIにおすすめ業者として自社を紹介してもらうというものです。現時点でも少しずつ、こうしたAI検索の回答を元に問い合わせにつながるケースが現れ始めています。今後はもっと伸びるでしょう。

ただし現状では、こうした検索で生成AIがおすすめ業者をリストするときの情報源は業者自身による仲間内のリンク集であることが多く、いまひとつ信頼でません。現時点での検索結果に最適化するなら、そうした仲間内のリンク集に加えてもらうことが有効ということになりますが、そうした取り組みはいつ裏目に出るかわかりません。

将来を見すえて、会社のエンティティを確立するとともに、広報活動や、地域や業界での社交活動に取り組み、実際の評判(レピュテーション)を高めていくことがおすすめです。地域や業界で実際に一目置かれる存在になるとともに、それを適切にウェブ上に反映していくことが、結果的には間違いのない方法であるように思います。

専門家としての見解を発信する

もしあなたがあなたの分野における本物の専門家であるなら、専門家としての見解や分析や意見を発信することは有効です。専門家や識者の意見には、耳を傾けるだけの価値があるからです。どこにでもある情報を発信するだけならAIの養分でしかありませんが、多くの人が参考にするような専門家の意見であれば、発信することによってあなたの存在感をより高めます。

まとめ

冒頭でも述べたように、AI検索ではない通常の検索はしばらく続きます。それがどれだけの期間かはわかりませんし、ユーザーのニーズ次第では完全にAI検索に入れ替わることはないかもしれません。ただ、ある程度はっきりしているのは、知識提供型のコンテンツはSEOに取り組む全員が優先するべきものではなくなるということです。

そもそもですが、コンサルタント業やアドバイザー業のように知識を伝える性質を持ったごく一部の業種を除けば、知識提供コンテンツで集客することはスマートではありませんでした。美容院やレストランや建築塗装業者を選ぶとき、私たちが選ぶ基準はコンテンツ作成能力ではなく、評判や技術や好みや仕様や価格だからです。

言い換えれば、やっとストレートに評判や技術やセンスや仕様をアピールするときがきたとも言えるでしょう。もちろん、この記事の内容は筆者個人の現状分析と将来予想に過ぎず、まったく見当が外れる可能性もあります。信じるも信じないも、これを読んだあなた次第です。しかし、AI検索の普及には何らかの形で備えておくべきなのは間違いないでしょう。

脚注

  1. Google I/O 2024: New generative AI experiences in Search ↩︎
  2. AI Mode in Google Search: Updates from Google I/O 2025 ↩︎
  3. Google CEO Sundar Pichai says AI will be ‘bigger than the internet’ | The Verge ↩︎

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