AI検索のSEOでは、LLMO、GEO、AIOなどとは異なり、AIが生成する回答に引用されることは重視しません。AIが生成する回答でおすすめとして推奨されることを重視します。AI検索は外部の第三者の意見を情報源にしておすすめを回答しますので、AI検索のSEOはサイト外部での評判の構築や言及の獲得を通じて実施していきます。
人々がよく使うAI検索はGoogle「AIによる概要」
そもそも人々はどこでAI検索を利用しているのでしょうか? ピュー研究所が2025年3月のアメリカのデータを元に実施した調査1では、調査対象者の58%はGoogle検索の「AIによる概要」を利用していました。これに対して、Chat GPTやGeminiのような生成AIツールを利用した人は13%であり、人々のAI利用では圧倒的にGoogleの「AIによる概要」が使われていることがわかります。

人々が調べ物にGoogleを使うという長年の習慣はそう簡単には覆りません。今後も調べ物にはGoogleが使われ続けるでしょう。そして、人々が最もよく使用しているAIがGoogleの「AIによる概要」であるなら、私たちが実施するAI検索のSEOが主な対象にするのも、この「AIによる概要」と、そこからの動線が用意されている「AIモード」となります。
AI検索のSEOの目的は「AIにおすすめされる」こと
以下のそれぞれの質問は、Google検索のAIモードにそれぞれの質問を投げた結果につながっています。それぞれをクリックして、AIがどのような回答をしているか確認してみてください。地域に関連した質問ではあなたの現在地の近くからおすすめされ、おすすめ製品では具体的な製品名が出ていることがわかります。
- この近くで中程度の学力の生徒におすすめの学習塾は?
- シミ抜きのうまい近くのクリーニング店は?
- 体重100kgで毎日走る人に最適なランニングシューズはどのモデル?
- 室内用の防寒衣料でおすすめの製品は?
- デスクトップでのニアフィールドリスニングでおすすめの3万円以下で買えるアクティブスピーカーは?
LLMO、GEO、AIOなどといった目新しい用語を使い、上記のような質問の回答の情報源として引用されるように自社サイトを最適化するサービスを提供する企業も見られるようになってきました。しかし情報源として引用されても意味がありません。引用はAIの養分にすぎず、ビジネス上のメリットが薄いからです。
ピュー研究所がアメリカの成人900人の2025年3月の閲覧データを対象に実施した調査2によれば、AIによる概要を見たユーザーのうち、AIによる概要が参照した引用元へのリンクをクリックしたユーザーはたった1%だったといいます。AI検索で人々が見たいのは引用元ではなく回答です。引用元へのリンクをクリックすることは滅多にないのです。

AIの回答に情報源として引用されるのではなく、AIの回答で自社ブランドがおすすめされることで、ビジネス上のメリットが生まれます。先に例として挙げたそれぞれの質問では、AIのおすすめが回答として表示されています。その中にあなたのビジネスを加えることがAI検索のSEOの目的です。
ウェブサイトの外部に着目する
AI検索のSEOではサイト内部を重視しません。AI検索に「処理能力の高いおすすめのスマホは?」とたずねるとApple iPhoneやGoogle Pixelを含んだ回答が返されます。しかしそれらの製品ページの構造化データマークアップは不完全で、PREP法で書かれているわけでも結論から先に述べられているわけでもなく、著者情報もQ&Aセクションもありません。
AI検索がiPhoneやPixelをおすすめのスマホとして回答する理由は、AppleやGoogleのサイト内やページ上にはありません。大手メディアや専門メディアによる報道や、プロによるレビュー記事や比較記事、一般の人々による購入報告など、サイトの外部に第三者による膨大な量のポジティブな言及を持っていることが理由です。
あなたの会社がAppleやGoogleほどの言及を獲得することは難しいかもしれません。しかしあなたの会社がAppleやGoogleと競合していないなら問題はありません。あなたはあなたの会社と競合する会社だけを見て、それらに勝る質と量のポジティブな言及を獲得していくだけだからです。このAI検索のSEOの手順は次の通りです。
- 自社ブランドがおすすめされたい質問を明確にする
- その質問の回答で情報源に使われているページやサイトを把握する
- 回答の情報源に使われそうなページに掲載されるように働きかける
どんな質問への回答でおすすめされたいか?
あなたのブランドをおすすめしてほしいのは、どんな質問への回答の中でのことでしょうか? AIの回答が不正確になりがちな漠然とした質問ではなく、条件を含んだ具体的な質問を明確にしましょう。また、典型的な質問だけでなく、趣旨の近い別の質問も考えてみましょう。たとえば次のような形です。
- この近くで中程度の学力の生徒におすすめの学習塾は?
- 偏差値52程度の中学生におすすめの近くの学習塾は?
- 中程度の学力の生徒に対応した近くの個別指導塾のおすすめは?
- 偏差値を10上げたい場合に近くでおすすめの集団指導塾は?
このように、似た趣旨の複数の質問を繰り返すことでAIの回答の傾向をつかみやすくなり、また、AIが回答を生成するにあたって情報源に使うページやサイトの傾向もつかみやすくなります。あなたの会社にとって重要な質問では、おすすめされているものやその情報源はどうなっているでしょうか?
AI回答の情報源はどんなページやサイト?
前段で考えたあなたのビジネスに関連の深い質問をひとつずつAI検索やChatbotに入力し、出力される回答で実際にどんなページやサイトが情報源に使われているかを確認し、リストアップします。2025年10月現在、さまざまな質問で試してみたところ、回答の情報源には次のような傾向がありました。
- 質問内容に関連するトピックを主に扱っているサイト内にあるまとめ記事や比較記事が情報源になりやすい。
- 質問者の現在位置に関連する質問の場合、Googleビジネスプロフィールの内容とそこに投稿されたクチコミ情報が情報源になりやすい。
- おすすめ製品を聞く質問では、ショッピングモールや大手ECサイト内の売れ筋ランキングが情報源になりやすい。
- 英語で質問した場合、レビューサイトやRedditなどのCGMサイトが情報源になることが多いが、日本語の質問ではそうでもない。
- 質問のトピックによっては、ニュースサイトの報道記事、個人ブログの体験記事、企業ブログのノウハウ記事などが情報源になることもあるが少ない。
- 製品の特徴についてはそのトピックに専門性を持つYouTubeチャンネルの動画が情報源になることもある。
情報源に選ばれているページやサイトのタイプは、質問によって大きく変わります。あなたが自社のブランドを回答に表示させたい質問を繰り返し、生成される回答の情報源となるページやサイトをリストアップしましょう。情報源がわかれば、自社のブランドがそこに掲載されるように働きかけることができます。
情報源に使われるページへの掲載を狙う
AIの回答の情報源となったページにあなたのブランドが掲載されていないなら、それはなぜでしょうか? または、情報源となったページに掲載されているにもかかわらず強い推奨を得られていないなら、それはなぜでしょうか? 不足を補い、情報源となったページやその類似のページへの掲載を狙いましょう。
- あなたのブランドがページの制作者に知られていないだけで、情報を提供してお願いすれば掲載してもらえそうなら、情報提供と掲載のお願いをしましょう。
- 地域に根ざしたビジネスでGoogleマップのクチコミ投稿が不足しているなら、既存の顧客にクチコミ投稿をお願いしましょう。詳しく具体的なクチコミが理想です。
- 製品を製造している場合、ショッピングモールや大手ECサイトなど多くのチャネルで商品を流通できるように、チャネルの開発に取り組みましょう。
- 大手マスコミや地域マスコミでの報道が得られるように、報道価値のある話題を提供し、プレスリリースを配信しましょう。
- あなたのブランドと関連の深いトピックを中心に扱うサイトがある場合、タイアップ記事を提供しましょう。
- 個人のブログやSNSの個人アカウントで話題にしてもらえるように、口頭や掲示物や同梱物、メールなどでお願いするほか、投稿キャンペーンを企画しましょう。
- アフィリエイト広告を利用することで比較コンテンツに掲載されやすくなる可能性があります。利用していないなら利用を検討しましょう。
あなたの会社名や製品名などのブランドがそれほど強力なものではない場合、さまざまな場所で紹介してもらうためには外部への積極的な働きかけ(アウトリーチ)が不可欠です。特定の媒体に狙いを定めた個別のアウトリーチのほか、広報や社交や広告など、使える手段を駆使して外部に働きかけましょう。
サイト外部での評判と信頼の構築が鍵
AI検索のSEOでは、自社サイトの外部に働きかけて評判を築くことに注力します。AI検索は外部の第三者の評判を情報源にしておすすめを回答するからです。これは従来のSEOで実施してきたレピュテーションやサイテーション、被リンク獲得、E-E-A-Tにおける信頼といった外部の第三者による評価と同じものです。
AI検索のSEOでは外部への働きかけを重視する一方で、自社からの情報発信はそれほど重視しません。自社サイトからの発信はもちろん、自社で管理しているSNSアカウントやYouTubeチャンネルなどのように、好きなだけ自画自賛できる場所での発信はそれほど信頼されないからです。言いかたを変えれば、オウンドメディアよりもアーンドメディアが重要だということです。
トロント大学の学生らによる研究論文「生成エンジン最適化:AI検索を支配する方法」3によれば、AI検索のSEOにおける戦略の中核は、権威あるメディアやレビューサイトでのレビューや言及を獲得することであるとしています。これからのSEOは「うまく書く」ことよりもむしろ「良く書かれる」ことが重要なのです。
ゼロクリック検索時代にいち早く対応する
AI検索時代はゼロクリック検索時代でもあります。検索ユーザーはウェブページを探しているのではなく回答を求めているのであり、その回答はAIが検索結果画面上で提供します。回答を得た検索ユーザーはそれで満足し、外部ウェブページへのリンクをクリックしません。このためAI検索のSEOにはトラフィックを増やす直接的な効果はありません。
トラフィックの流入量でAI検索の効果や影響を測定しようとすることは誤りです。AI検索のSEOでは、評判の良い製品やサービスや会社としてあなたの会社が推薦されるだけです。あなたのウェブサイトを訪れるのは、購入や問い合わせのタイミングだけかもしれません。AI検索のSEOの成果を量る指標は、指名検索数や売上やリード獲得数などが適切でしょう。
従来であれば、検索ユーザーとあなたのブランドとの最初の接点は、あなたのウェブサイト上だったかもしれません。しかしAI検索時代を迎え、その接点はAIが生成する回答内へと移行しつつあります。その現実に合わせて、AIが生成する回答の中であなたのブランドを推奨させることが、ゼロクリック検索時代の新しいSEOの姿です。
まとめ
人々に最もよく使われているAI検索はGoogleの「AIによる概要」であり、それはいつも見る検索結果の最上部にあります。AI検索はすでに普及し、一般に使われ、その回答は意思決定の参考にされているのです。AI検索のSEOは未来の話ではなく、すでに現在の環境であり、企業にとって喫緊の課題です。
あなたの製品やサービスは、コンテンツが優れていることによって売れるものでしょうか? それとも、評判が良いことによって売れるものでしょうか? ほとんどの製品やサービスが買われる理由は、コンテンツが優れていることではなく、よく知られていて評判が良いことでしょう。AI検索の普及は、このビジネスの現実を検索の世界に映し出します。
あなたの製品やサービスが評判によって売れるものなら、オフページSEOに注力してウェブ上での評判を高め、AI検索の回答で推薦されるように取り組んでいくことが賢明な戦略となるでしょう。現状すでに、あなたの会社にとっては知識提供でアクセスを集めるコンテンツSEOは最善策ではない可能性が高いのです。
住 太陽