会社ブログの信頼性を高めるために、専門家として「認知的信頼」と「感情的信頼」を両立させ、読者の認知と感情の両面から信頼を得る方法の考察です。まだまだ質の高い会社ブログが少ない今、他社に先んじて方向を転換し、情報発信を通じて信頼を獲得していくための要点を考えます。
会社ブログは「企業の顔」として見られる
御社のブログを見ているのは、現在や未来のお客様と、同業他社や取引先です。あなたはきっと、同業他社のブログを見て「これではとても信頼できない」と感じたことがあるのではないかと思います。もし御社のブログが、正確でなかったり、公平性を欠いたりしていれば、あなたやあなたの会社が信頼を失う可能性が高まります。
会社ブログで情報を発信する際の注意点は「信頼を失わないようにすること」です。時間をかけて築いた信頼も、失うのは一瞬です。不正確な情報や読者への不誠実な態度は、あなたとあなたの会社の評価の低下に直結します。常に細心の注意を払い、真摯に情報と向き合いましょう。
僕も自分の専門分野であるSEOに関して、他社のブログ記事を見て「こんな露骨な間違いを書いてたら信頼を失うよ」と心配になることがよくあります。
会社ブログで情報を発信する大きな目的の一つは信頼の獲得でしょう。現在や未来のお客様をはじめ、同業他社や取引先といった人々に「ただ見てもらう」のではなく「信頼を構築する」ためにブログを書いているはずです。であるなら、企業の顔として誰に見られても恥ずかしくない、信頼に足る記事を書いていく必要があります。
信頼されることは、販売や契約にとって不可欠であり、SEOの実践ではE-E-A-Tを構成する最重要の要素であり、業界内での存在感を高めるために必要な要件であり、またブランディングの一環でもあります。会社ブログを信頼に足るものにしていくことには、とても大きな意味があります。
認知的信頼のうえに感情的信頼を築く
シンガポール国立大学のダニエル・J・マカリスター准教授による対人信頼関係の研究1によれば、信頼には認知的な側面と感情的な側面があるといいます。認知的な信頼は相手の能力に対する信頼で、理性的に判断されます。もう一方の感情的な信頼は認知的な信頼の上に築かれる個人的な信頼です。
- 認知的信頼 — 相手が持つ利用可能な知識や能力に対する信頼。頼りになる度合いとして理性的に判断される。感情的信頼よりは表面的にとどまる。
- 感情的信頼 — お互いを一方的に利用したり害したりしないという誠実さに対する共同体的な信頼。相手との個人的・感情的な結びつきに根ざしている。
僕もあなたも何らかの分野の専門家ですから「専門家として信頼される」ことが必要です。専門家として信頼されるには、認知的な信頼だけでなく感情的な信頼も獲得する必要があります。医師や弁護士などの専門家を頼るシーンを思い浮かべれば、相手が自分をいい結果に導いてくれるという信頼は不可欠だとわかります。
信頼の獲得はとても難しいもので、比較的容易とされる認知的信頼(知識や能力に対する信頼)を獲得するだけでも難しいのに、感情的信頼となるとかなりのハードルの高さです。
少し難しい話をしましたが、企業としての情報発信では、まず「知識や能力が十分にあると判断してもらう」ことが最初の一歩であり、そのうえで時間をかけて接触を繰り返し、「お客様のために誠実に働き、一方的に利用したり害したりする意図がないと信じてもらう」ことが次の段階となります。
知識や能力が十分にあると判断してもらう
会社ブログで発信する情報は専門家として発信するものですから、専門性や正確さは必須です。また、内容を確実に伝えるためには、明瞭でわかりやすいことも重要なポイントでしょう。加えて、他にはない独自の価値があることも、そのブログを読む理由になるため重要です。まとめると次のようになるでしょう。
- 専門知識の提供 — 御社の専門分野において、読者が抱える疑問や課題を深く理解し、それに対して的確に情報や解決策を提供しましょう。
- 客観的根拠の明示 — どんなに素晴らしい意見や分析も、その根拠が示されなければ読者の信頼は得られません。主張には必ず、信頼できる調査結果や、情報源となったウェブページや文献の引用など、客観的な根拠を添えましょう。また出典は明確に記載することは鉄則です。個人的な感想や洞察と、事実に基づく情報を明確に区別して提示してください。
- 具体例の提示 — 専門的な話やデータだけでは、読者にイメージが伝わりにくいことがあります。事例やお客様の声などを具体的に紹介することで理解しやすくなり、説得力が増します。
- 論理的で理解しやすい構成 — 伝えたい結論が何なのか、その結論に至る理由は何か、という論理の道筋が明確であることが重要です。見出しやパラグラフを効果的に使って情報を整理し、読者がスムーズに読み進められる構成を心がけましょう。
- 専門家としての独自の洞察 — 既知の情報を集めて並べるだけでは、読者に新たな価値を提供できません。その情報が持つ意味、背後にある構造、将来への影響、業界が抱える本質的な課題などについて、御社自身の経験や専門知識に裏打ちされた独自の分析や見解を加えましょう。
- 細部への配慮 — 誤字脱字や事実誤認は専門家としての信頼を大きく損ねます。記事を公開する前には、複数回、できれば第三者の目も通して入念にチェックしましょう。
誠実さと公正さを信用してもらう
知識や能力といった認知的信頼の次は、誠実さや公正さを信用してもらえるように、時間をかけて取り組んでいきましょう。発信内容の透明性や公正性を意識し、誠実な発信を続けていくことで、時間をかけて感情的な信頼を獲得していきます。極めて難しい試みですが、やる価値はあります。
- 透明性を意識する — 情報を意図的に隠したり、自分に都合の良い側面だけを強調したりするのではなく、可能な範囲で透明性を保つよう努めましょう。例えば、製品やサービスのメリットだけでなく、考えられるデメリットや注意点についても正直に伝えるなどです。
- 偏りのない情報提供を心がける — 特定の物事に不自然に肩入れしたり、または不当に評価したりすることを避けましょう。客観的・多角的に物事をとらえることで、公正な人物または企業であるという印象を持ってもらえる可能性が高まります。
- 全体の利益を考慮する — 自分や自社の利益だけでなく、顧客、業界、そして社会全体の利益に配慮した情報発信は、公正さの表れとして評価してもらえる可能性があります。
こうして要件を挙げてみても、難しさがにじみます。会社ブログで信頼の獲得を目指すのは、最終的には自社の利益のためです。また、何を書き、何を書かないかは、それが恣意的なものであるかはともかく、常に書き手が選択するものです。こうしたことから、完全な誠実や公正はあり得ず、常に留意する努力目標とするのが現実的でしょう。
また、人にはレイク・ウォビゴン効果と呼ばれる認知バイアス2があり、誰もが自分自身を平均以上に優れていると認識します。人間は誰でも、自分自身の道徳性や信用性や正直さを平均以上だと評価しやすい性質があるのです。僕もあなたも、自分で思っているほどには公正でも誠実でもないと認識しておくべきでしょう。
個人的には、自分自身も認知バイアスの影響下にあることを自覚したうえで、公正でいようと誠実に努力し続けることが鍵になるのではないかと思います。
また感情的信頼を獲得するのは、会社よりも個人のほうが有利です。会社という組織を信頼することは難しくても、社長個人なら信頼できるものです。これは大企業でも同じですが、中小企業であればなおのことです。個人名を前に出してブログを書くこと、それを社長自身がやることは本当におすすめです。
まとめ
信頼とは、あなたやあなたの会社を有能であると信じる「認知的信頼」と、あなたやあなたの会社が誠実であり顧客や社会に対して善意を持っていると感じる「感情的信頼」が複合したものです。こうした信頼を獲得していくことは簡単ではありません。かなり強く意識して取り組む必要があります。
とはいえ多くの会社ブログには雑なものが多くあり、片手間に書かれたか、若手社員や生成AIに丸投げしたような記事を追加し続けているブログも少なくありません。あなたの競合がそのようなブログを更新しているなら、大きなチャンスがあると考えることもできるでしょう。
完璧な正確さや、完璧な公正さはありません。それでも、より信頼できる情報発信をしようとする努力は必要です。会社ブログを信頼獲得のための「企業の顔」と認識し、誠実な姿勢を保持して丁寧に運営していれば、それはやがて信頼へと実を結んでいくことでしょう。僕も頑張ります。